ハナビ、

ハナが東京砂漠で綴るよたばなしです、英語歌詞翻訳はじめました copyright ©︎ ハナ 2009-2022 all rights reserved.

Both Sides Now

ずいぶん…ひさしぶりの投稿でございます。

特に理由はないけど、色々追い込まれてブログで翻訳する気持ちになれなかっただけです。

オアシスやりますという予告しちゃったけど、どうすっかねってそのまま放置に。

ちょうど半年ほっぽってたんですね。

何か書くのって時間も気力も使いますしね。書き始めて気付くと一日終わる。だから仕事以外で何か書ける人のことはまじで尊敬します。

突き詰めて仕上げないと満足できない私の損な性分も手伝って、よっこらしょと重い腰を上げるきっかけでもないとなかなか書く気になれぬ。

 

で、そのきっかけとは。

第94回米アカデミー賞授賞式です。

またの名をウィル・スミス回ね。

いや私オスカーウォッチャーなので、毎年この時期はいそいそWOWOW再契約して生中継みるんですよ。

ほら、映画って結構予告編だけで面白いじゃないですか。

そのよりすぐった予告編の世界最高峰のを続々とみることができる。

今アツい俳優やトレンド…何もただの流行ではなく、社会問題にも触れてくれる(特に米国なので人種差別とかダイバーシティ多めですね)。

出演者の衣装も目に鮮やか。

こんな素晴らしいショーをみない手はないのですよ。

もっとも日本の私がそんなのに興味を持ってるなんて、しょせん高等遊民(全く遊んで暮らせるような金銭的余裕はないですが、脳内的な意味で)のお気楽感があるので、けっ、とあしらわれるくらいが正しいような気はします。

過去まさにアカデミー賞の授賞式内で流した動画に、アメリカのどこか田舎の街で映画館の近くにいる人たちに「アカデミー賞って知ってる?」ってインタビューして聞いて回ったのを撮影したというものがあったんだけど、田舎街の人々からは( ゚д゚) ハァ? シラネ- ナニソレクエンノ?? 的な回答がほとんどだったのを覚えています。それを授賞式のモニター越しに世界に流すとか皮肉きいてんなと思ったんですが。

ただ、それでも遠い日本にいる私のような映画ファンにも毎年感動と興奮を届けてくれることもあるのです。

こういうお祭りがあるからこそ、話題ができて映画界が潤うわけだし*1、インテリのお遊びがこの世からなくなることはやっぱりいかんと思うわけですよ。脳内お遊びができる状態が世の中で保たれていることが健全なんだから*2

そしてウィル・スミスが世界で最も口ずさまれる放送禁止用語をこの神聖なる祭典で二度ものたまったのがWOWOWできっちり聴けてしまったという。

 

さてアカデミー賞で最も話題をさらったのはウィル・スミスだったんですが、最も栄誉に輝くのはなんといっても作品賞です。

「コーダ あいのうた」やりましたね!



助演男優賞、脚色賞、作品賞のノミネート全制覇。

フランス映画「エール!」のリメイクなわけですが、リメイクというのを補ってあまりある挑戦であったというのが、助演男優賞、脚色賞の受賞をみていて伝わってきました。

正直大本命は「パワー・オブ・ザ・ドッグ」かと思ってました。*3

町山さんのツイッターでの解説で、同性愛だから女性蔑視というのは旧来の価値観を脱していない、という指摘があって、なるほどなと思いました。そしてあの美しすぎる至高の映画「ブロークバック・マウンテン」についてもそうだったと言及されていたので*4、つまりカウボーイってゲイだとどうしても逆に虚勢を貼るというのがテンプレなんではないかと、その時代を映しただけではないかという気もするんですが…これからみるので真相はみてのお楽しみ。

 

CODAが音楽用語のCodaではなく、Children of Deaf Adaltsということを初めて知りました。

何が描かれているのかは後日、映画館で確認します。

Appleの制作なのに、日本では配信してくれてないみたいだから…

 

さて!

私がこの映画の作品賞受賞に興奮してしまうのは、ハイライトにあの!ジョニ・ミッチェルの最も有名な曲「青春の光と影」が使われているからなのですよ!*5

このブログでも10年以上前から私はジョニ・ミッチェルが好きでたまらない!と書き綴っているように!

 

↓ほぼプリンスについてだけどプリンスのA Case Of Youはほんとにすごい。

最も敬愛するアーティストのひとりっていうか、ツートップのうちのひとりですね。*6

多数のアーティストにカバーされた本当に有名な曲です。

こんな曲を20代前半で書いてしまうってどうなっとんねんと思います。

天才は時も性別も軽く超えてくるんですね。震えますね。*7

音楽的にもフォーク、ロック、ジャズのあちこちを軽々飛び回ったりできちゃってますし。

ジョニは二十歳そこそこで妊娠したのに相手が逃げて出産するも当時は育てられず子供を里子に出したりしています。

さぞや愛と葛藤が大きかったでしょうね。

そのあたりが若くてもなにか普遍的なものを得たきっかけなのかもしれません。

 

有名なのは「ブルー」ですが「逃避行」というアルバムが全体を通してすごく好きです。

ちなみに「青春の光と影」はこれらのロック超名作アルバムに全然入ってなくて、さらに前のデビューそこそこのアルバムに入ってるって…もう化物でしょう。*8

あまりにも有名すぎるしそらでうたえるくらい馴染んじゃってる歌で訳す気も起きなかったのですが、改めて「コーダ あいのうた」の作品賞受賞を祝して、和訳してみたいと思います。

 

Both Sides Now

両面の残像*9

 

Rows and floes of angel hair

並んでたなびく天使の髪

And ice cream castles in the air

空に浮かぶアイスクリームのお城

And feather canyons everywhere

そこらじゅうに散らばった羽の渓谷

I've looked at clouds that way

私は雲をそんな風にみてきた

 

But now they only block the sun

でも今、雲は太陽をさえぎるだけ

They rain and snow on everyone

雨や雪をだれの上にも等しく降らせる

So many things I would have done

できたことがたくさんあったのに

But clouds got in my way

でも雲が邪魔をした

 

I've looked at clouds from both sides now

私は雲をどちらの側からもみてきた

From up and down, and still somehow

上からも下からも、でもどうしてか

It's cloud illusions I recall

思い出せるのは雲のまぼろしだけ

I really don't know clouds at all

雲の本当のところは全然わからない

 

Moons and Junes and Ferris wheels

月と六月と観覧車

The dizzy dancing way that you feel

目がくらむようなダンス

As every fairy tale comes real

全てのおとぎ話が現実になったような

I've looked at love that way

私は愛をそんな風にみてきた

 

But now it's just another show

でも今は別の場面になって

You leave 'em laughing when you go

あなたはそんな愛を笑って行ってしまう

And if you care, don't let them know

もしも大事に思うのならそうとは知らせないで

Don't give yourself away

不実を隠したままでいて

 

I've looked at love from both sides now

私は愛をどちらの側からもみてきた

From give and take, and still somehow

与える側も受け取る側も、でもどうしてか

It's love's illusions I recall

思い出せるのは愛のまぼろしだけ

I really don't know love at all

愛の本当のところは全然わからない

 

Tears and fears and feeling proud

涙と怖れと誇らしく思うこと

To say "I love you" right out loud

愛していると声高らかに告げること

Dreams and schemes and circus crowds

夢と計画とサーカスの群衆

I've looked at life that way

私は人生をそんな風にみてきた

 

But now old friends are acting strange

でも今、昔からの友達は変なふるまいをしている

They shake their heads, they say I've changed

頭をふりふり、お前は変わったなと言う

Well something's lost, but something's gained

そりゃ失ったものはあるけど、得たものだってあった

In living every day

日々を暮らしていくうちに

 

I've looked at life from both sides now

私は人生をどちらの側からもみてきた

From win and lose and still somehow

勝利も敗北も、でもどうしてか

It's life's illusions I recall

思い出せるのは人生のまぼろしだけ

I really don't know life

人生の本当のところはわからない

At all

全然

 

単語は全部わかっても解釈が意外とわからない!

これぞまぼろしのよう!

つかめないいちごのよう!ってのは華原朋美の「I'm Proud」ですね。当時も今もなんでいちご?って謎です。なぜいちごなのかがまさにつかめないです。*10

 

Moons and Junes and Ferris wheelsとか、Dreams and schemes and circus crowdsとか、このあたりの言葉選び、詩情を感じますね。

 

それからloveのくだりはもうなんのことなのかぼんやりしてしまい、それこそI really don't know it at allでした。

if you care, don't let them know, don't give yourself away, は直感的に愛は去ってしまうから全てを捧げるのはやめなさい的な意味だと思ったのですが…でもgive oneself awayは辞書的には馬脚を表すとか不正がばれるとかいう意味らしい。どうなんでしょう。

 

単純にどっちなのかわからないのが "They shake their heads, they say I've changed" は、彼らが「俺は変わっちまったよ」と言ってるのか、彼らは「お前変わったな」なのか、字面で確認してもわからない。

They say "I've changed" じゃないから「お前変わったな」じゃなかったのかと思ったものの、そしたらThey say you've changedだな?あれでも「俺は変わっちまったよ」だったらThey say they've changedだっけ?やっぱりわからない!

 

も、もしやこれすらもBoth Sidesてことなのか…?

英語ってやっぱり難しいですね!

*1:ドライブ・マイ・カー、良かったですね!手ぶらじゃなくて。濱口監督は「おお、君がオスカーくんなんだね」とかステージ上で小ネタかましてたけど、リアクション小さすぎて&きょどりすぎて、まるで伝わってなかったのが愛らしかったです!うっかり終わらされそうになって音楽流れかけて、待って!待って!とかもすごく可愛かった。どんな事情だかわからないけど圧倒的に来るべきはずなのに来られなかった三浦透子さんへの感謝の意をステージ上で伝えてくれるとかも、いいなと思いました。しかし監督なのに御一行様のツアコンか俳優陣のマネージャーみたいなひょっこり感かもしすぎていて、変にこわばったりとかせずにいられるというのは逆にすごい。西島さんはかなりしっかりと落ち着いていてさすがでした。あと岡田将生くんはその辺の女優より全然キレイ笑

*2:現在ロシアとウクライナが戦争状態であってもアメリカはアカデミー賞の受賞式をやるわけです。そこに触れる政治的なメッセージはほんのちょびっとあったくらいでした。日本で「ひまわり」の上映が行われているというニュースを聞いたので、そういうのあるかなと思ったけどなかったですね。そこまでの事態じゃないという逆アピールでもあるのかな。

*3:「犬の力」と聞いてドン・ウィンズロウの「犬の力」と関係ある?と一瞬思ったのですが、違いました。これ一瞬絶版になってたけど再販されたのかしら。ウィンズロウは初期だけどやっぱり「ストリート・キッズ」ですね!なんで映画化されてないのか不思議なくらい最高の探偵小説です。

*4:この時の作品賞発表でジャック・ニコルソンが( ゚д゚) ハァ?とうっかり口を滑らせたというのが私がアカデミー賞ウォッチャーになったきっかけのひとつでした。そういえばアン・リーも監督賞だけでしたね。歴史は繰り返す。ちなみにこの時の作品賞はたぶん多くの人の記憶に残らなかった「クラッシュ」。でも同性愛を扱った映画では「ムーンライト」が作品賞を撮ってるので同性愛がはじかれているわけではないです。私は「ムーンライト」を劇場でみて、ああこれは映画館でみる映画なんだなとしみじみ思いました。あれを配信でみてもおそらくあの哀しさは伝わらぬ。ああいう映画は映像に包まれてこそ理解できるのです。

*5:本人ver. こんなにきれいな映像あるんだ。

*6:ちなみにもう一人はルー・リードです。デヴィッド・ボウイは異次元すぎて除外。あとリアム・ギャラガーさんは愛してはいるけど敬はしてないので除外

*7:飛行機の中で読んだソール・ベローの「雨の王ヘンダソン」に着想を得たとのことです。そんですぐ書けたとか。天才えぐいわー。しかし絶版っぽいですね、雨の王ヘンダソン。読んでみたいな。

*8:ジャケットも本人プロデュース。絵描きになりたかったそうで、画才もすごい。

Blue

Blue

*9:うーん、難しい!"残像"に漕ぎ着けたのはそこそこですが、Both Sidesがしっくりこないですね。なんかうまい訳ないか頭をひねっていたら「善悪の彼岸」というニーチェの著書(読んでないけどタイトルだけ知ってます)をふと思い出し、"彼岸"ってやるなー!と思いました。邦題「青春の光と影」は、ジョニが当時年若い女性だったとしても壮年の感覚を歌ったlifeのパートがあるから"青春の"にはちょっと賛成できないけど、"光と影"はすばらしい訳ですね。「霞か雲か」というのも頭をよぎりました。そしてカズオイシグロの「日の名残り」も。どんどん遠ざかるな…

*10:最近ぽちゃぽちゃして幸せそうな華原朋美をみると、人って変われるんだなとなんかほっとします。

I'm Proud (Radio Edit )

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