Englishman In New York
最近なんだか早朝起きるようになっちゃって、ついでになんとなく散歩をはじめました。寝落ちもめちゃくちゃ早くなって…なんなんすかね。抗体のせいですかね(違うと思う)。
早朝だとあまり人ともすれ違わないし、必要最低限の買い物を近所の24hスーパーで出来たりもするので、不安も軽減されます。在宅勤務で人に会わない毎日が続き、デルタ株まじ怖いってなってよりひきこもっちゃった結果、なんか心に軽いやばさを感じはじめていたので、早朝散歩はいい気分転換になってくれそうです。
とはいえ今朝は大雨だったし、前日それなりに体調崩したので見送り。
オリンピックが去ったら大雨とか踏んだり蹴ったりですね。正直、政府自治体の医療への負担ガン無視のうわべ取り繕い状況がたまらんです。病院満床、救急車のっても家に返される(ここんとこ毎日のように救急車のサイレン聞きますうちの近所…)、堂々と自宅療養しろとか言われるってなんなの。その上ワクチン打っても感染するし、じきに抗体消えちゃうからもう1回打たなきゃいけないとかいうし。一体これ終わりが来るものかいね。
身の危険レベルでいったら比にならないとはいえ、この閉塞感って戦時中にも味わったものと似たようなものかもしれないなと。表面上を取り繕って威勢よく都合のいい情報だけメディアが回すって、本当に同じ構造ですよね。
だから今年はネットで広島長崎の平和式典、終戦記念日の追悼式ぜんぶ見て黙祷しました。こんな世の中にしちゃってごめんなさいという気持ちで。
良識に従って行動すること、社会全体を良くしていくために尽力すること、そういう大人としての責任を軽視して、目先の利益や正解を得ることだけに心血を注いでいて、さらにそれを別に悪いとは思わない世の中になっているような気がしてならないです。
バズればいい、そのために1秒で目に止まるキャッチーさがほしい、表面を取り繕えばそれでオーライ、タブーというが考え方は違っていい、はい論破*1、みたいな*2。
しかもそんな状況にひとりのいい歳した大人として何も対抗できていないのが非常にもどかしい。選挙に行って一票は入れているけど、政治屋のマーケティングに太刀打ちできていない。正しいメッセージを発する政治家は、むしろ正しさゆえにあっさり負ける。政治って雰囲気だし、数だから。何度も記者会見して、やってる感をかもして、有能そうなポーズを装える、パフォーマンス力が高い政治家には、一般市民が一瞬で理解できない地道なデータや政策を持ち出しても、絶対に勝てない。
我々はというか、少なくとも私は、いま非常に嫌な世の中のうねり(ウイルスとかではなく世相的なもの)に巻き込まれていて、苦しくてもどうにもできないでいる、と感じています。いやほんと一市民として私はどうしたらいいんでしょうね。
数年後にブログ読み返したら、あああの時はあんなんだったな、で済むのかな。それまでサバイバルしないといけないですね、ひとまず。
とはいえ、私自身が生きる要領がいいわけではない、というかむしろ不器用なほうだから、苦しい人たちを生み出す社会構造のいびつさや、そういう人たちをあっさり差別したり無視したりする為政の冷酷さ、みたいなものに特に敏感になりがちなのかもしれません、明日は我が身っていつも思ってます。
と、社会構造的なものに話が及んだところでいきましょうか、本日の歌詞翻訳お題。
前回の宿題だったStingのEnglishman In New Yorkです。
Stingはアーティストとしてすごいクレバーで、音もいつ聴いても時代に左右されず普遍的でかつ緊迫感があって、憧れますね。例えるならばなんかこう、勉強できるのに陸上部でマラソン速いしケンカも強い、みたいな。割といい筋肉してるからですかね。
歌詞も秀逸のオンパレードです。Police時代のEvery Breath You TakeやMessage In A Bottleはもちろん有名ですけど、Fields Of GoldとかDesert RoseとかFragileとか。なによりあれですよ、レオンのShape Of My Heartですよ。トランプの4つのマークをサビにきれいに織り込んで最後はHeartでしめる、ってまじかっけー!ですよ*3。
で、Englishman In New YorkはStingがクウェンティン・クリスプというアーティストから影響を受けて作った曲だとか。Stingは彼を"singularity"という言葉で表現していますね。唯一無二の、国士無双、みたいなもんかな。
クウェンティン・クリスプに関する日本語紹介は、この方のブログに詳しいです。
音源はこのあたりで試聴できまして、
しかしながらデヴィッド・フィンチャー監督のPV!をこれはYouTubeで絶対みてほしいんですけど埋め込みできないですね。クウェンティン・クリスプも登場しています。
Sting - Englishman In New York - YouTube
さていよいよ和訳とまいります。
Englishman In New York
紐育のイギリス人*4
I don't drink coffee, I take tea, my dear
コーヒーは飲まないのです、紅茶をいただけますか
I like my toast done on one side
トーストは片面だけ焼くのが好きですね*5
And you can hear it in my accent when I talk
話すときのアクセントからおわかりでしょうけど*6
I'm an Englishman in New York
僕はニューヨークに滞在している英国人なのです
See me walking down Fifth Avenue
五番街を歩いていく僕の姿をごらんなさい
A walking cane here at my side
ステッキを傍らに携えています
I take it everywhere I walk
歩くときはどこへでも持っていくんですよ
I'm an Englishman in New York
なぜってニューヨークにいても英国紳士ですから
Oh, I'm an alien, I'm a legal alien
ああ僕は外人、合法的な外人
I'm an Englishman in New York
ニューヨークの英国紳士
Oh, I'm an alien, I'm a legal alien
ああ僕は異人、合法的に滞在する異人
I'm an Englishman in New York
ニューヨークにいるイギリス人
If "manners maketh man" as someone said
誰かが言った「礼儀こそが人を紳士たらしむ」ならば
He's the hero of the day
その方は今日の英雄だ
It takes a man to suffer ignorance and smile
その言葉で紳士は無視に苦しみかつ笑顔にもなる
Be yourself no matter what they say
誰がなんといおうとも自分らしくあるべきなのだから
Oh, I'm an alien, I'm a legal alien
ああ僕は外人、合法的な外人
I'm an Englishman in New York
ニューヨークの英国紳士
Oh, I'm an alien, I'm a legal alien
ああ僕は異人、合法的に滞在する異人
I'm an Englishman in New York
ニューヨークにいるイギリス人
Modesty, propriety can lead to notoriety
謙虚さ、礼儀正しいことが時として悪評判にもなる
You could end up as the only one
しまいには孤立してしまうことさえあろう
Gentleness, sobriety are rare in this society
親切心や素面でいることはこの界隈では稀なのだ
At night a candle's brighter than the sun
夜は太陽よりキャンドルが明るいのだから*7
Takes more than combat gear to make a man
人を紳士たらしめるには武装よりもっと何かが必要だ
Takes more than a license for a gun
戦闘服や銃のライセンスよりもっと
Confront your enemies, avoid them when you can
お前の敵に立ち向かえ、できるならば避けろ
A gentleman will walk but never run
紳士は歩きはすれど決して走ったりはしないのだから
If "manners maketh man" as someone said
誰かが言った「礼儀こそが人を紳士たらしむ」ならば
He's the hero of the day
その方は今日の私の英雄だ
It takes a man to suffer ignorance and smile
その言葉で紳士は無視に苦しみかつ笑顔にもなる
Be yourself no matter what they say
誰がなんといおうとも自分らしくあれ
Be yourself no matter what they say
誰がなんといおうとも自分らしくあれ
Be yourself no matter what they say
誰がなんといおうとも自分らしくあれ
Be yourself no matter what they say (oh, I'm an alien, I'm a legal alien)
誰がなんといおうとも自分らしくあれ (ああ僕は外人、合法的な外人)
Be yourself no matter what they say (I'm an Englishman in New York)
誰がなんといおうとも自分らしくあれ (僕はニューヨークの英国紳士)
Be yourself no matter what they say (oh, I'm an alien, I'm a legal alien)
誰がなんといおうとも自分らしくあれ (ああ僕は異人、合法的に滞在する異人)
Be yourself no matter what they say (I'm an Englishman in New York)
誰がなんといおうとも自分らしくあれ (僕はニューヨークのイギリス人)
Be yourself no matter what they say (oh, I'm an alien, I'm a legal alien)
誰がなんといおうとも自分らしくあれ (僕はニューヨークのイギリス人)
ところで。恥ずかしながら私がこの曲をちゃんと知ったのはそう遠くない昔でして。
フランスから帰ってきて某社会人になってもゆるーく滞在しているともなくしている洋楽聴きましょうサークルというのがあるのですが、学生ちゃんのみんなの前で、いきなりやってきた社会人のフランス帰りの変な大人が、フランス思い出の曲をかけまーす、って当時現地で聴いて気に入った曲をあれこれかけた中に、この曲の替え歌があったのでした。
聴きにきてくれた学生ちゃんのひとり(もう立派な社会人ですが相変わらず仲良くしてくれる素敵なお嬢さんです)が、これってStingの曲ですか?と聞いてくれて、ほんとだ!Stingの曲と同じメロディだ!と初めてわかったのでした。どこかしらで耳にしたことはあってもちゃんと聴いたことがなかったんです。しかもレゲエになってたし。
Tiken Jah FakolyというレゲエアーティストのAfricain à Parisという曲です。
Tiken Jah Fakoly - Africain à Paris - YouTube
ちょっと頑張ってフラ語訳もしちゃうんだぜ、でも翻訳サイトと辞書と首っ引きでだけどな。
Africain à Paris
巴里のアフリカ人
Maman, je pense à toi, je t'écris
母さん、いつも母さんのこと思ってる
D'un trois étoiles à Cachan
パリ郊外のカシャンにある三つ星ホテルから手紙を書くよ
Tu vois faut pas que tu trembles ici
ここでびびったりしちゃいけないんだよ
J'ai un toit et un peu d'argent
僕には住むところだってあるし、少しはお金だってあるんだ
On vit là, tous ensemble, on survit
僕らはここに住んで、みんなで一緒に生き延びてきた
On ne manque presque de rien
僕らに欠けているものなんてほとんど何もないんだよ
C'est pas l'enfer, ni l'paradis
地獄でもなければ天国でもない
D'être un africain à Paris
パリでアフリカ人として生きることは
Oh, oh, un peu en exil
ああ、ちょっとした亡命のよう
Étranger dans votre ville
君らの街の異国人
Je suis Africain à Paris
僕は巴里のアフリカ人
Oh, oh, un peu en exil
ああ、ちょっとした亡命のよう
Étranger dans votre ville
君らの街の異国人
Je suis Africain à Paris
僕は巴里のアフリカ人
Sais-tu qu'ils nous ont promis des places
彼らが僕らに席を確保したのは知ってるだろ
Mais c'est par la voie des airs
でもそれは航空便だったんだ
Elles ne sont pas en première classe
ファーストクラスじゃなくて
C'est un oiseau nommé Charter
チャーター便という名前の鳥だった
En attendant que l'oiseau s'envole
その鳥が飛び立つのを待ちながら
Des mémoires aux doigts de fée
素晴らしく器用に
Font tourner autour des casseroles
シチュー鍋をかきまわす指を思い出していた
Un soleil au goût de mafé
マフェの味がする太陽
Oh, oh, un peu en exil
ああ、ちょっとした亡命のよう
Étranger dans votre ville
君らの街の異国人
Je suis Africain à Paris
僕は巴里のアフリカ人
Oh, oh, un peu en exil
ああ、ちょっとした亡命のよう
Étranger dans votre ville
君らの街の異国人
Je suis Africain à Paris
僕は巴里のアフリカ人
Et du dimanche au dimanche, aussi
日曜から日曜までずっと*8
Je ne fais que travailler
僕は働きづめだ
Tu vois j'en ai de la chance, ici
僕はチャンスをここで掴んだんだよ
J'aurais bientôt mes papiers
もうすぐ書類を手に入れる
Maman, j'sais que tu as l'habitude
母さんはいつものように
De trop vite t'affoler
早合点して慌てふためくだろうね
Surtout n'est pas d'inquiétudes
でも絶対心配しちゃだめだ
Si un hôtel a brûlé
たとえホテルが焼けたってね
Oh, oh, un peu en exil
ああ、ちょっとした亡命のよう
Étranger dans votre ville
君らの街の異国人
Je suis Africain à Paris
僕は巴里のアフリカ人
(Refrain)
全然内容違いますね!!!
いや、訳してみてよかった。こんな歌だったのかって初めてわかりました。
当時はラジオで聴いてわかる部分の歌詞(ってもJe suis Africain à Parisくらいしかわかんないわけですよ)を即メモってぐぐったけど見つからなくて、なんとなくFNAC*9をさまよって新作のワールドミュージックが並んでいたところをあさってみたら、L'Africainというタイトルを見てピンときてアルバムを手に取って裏面をみたら"Africain à Paris"という曲が収録されてるのを見てこれに違いねー!!!と確信を持ってゲット&ビンゴしたアルバムでした。こういうときの自分の引きのすごさというか、好きな音楽のつきとめ力にはたまに感動しますね。
Tiken Jah Fakolyはコートジボワール出身のレゲエアーティストで、抑圧された人々の現状を歌って世界レベルで人気を博したものの、政情不安と外国人排斥が高まる中、政治的なメッセージ性の強い歌詞が原因で殺害予告を受けたため、マリに亡命しているらしい、とこれはWiki情報です。
かつて植民地だった地域が多々あるためか、パリのアフリカ人はそれなりに多いようです。
フランス滞在当時に働いてた職場にもアフリカン系の人が何人もいました。が、彼らはアフリカ人とは限らないのですよ!私は自分がガイジンなもんだから他の人もみんなガイジンだろうと思ってて、最初の研修のとき、出身はどこ?とアフリカン系のおとなしくてやさしい力持ちな同期男性になんとなく聞いたら当たり前のようにフランス、と言われてああ、私の中の偏見よ…と気づいたのでした。同じ国籍のものは基本的に見た目からして同じ民族系に属する、というのは日本でそれが多数派だからこその認識なのですよね。アフリカン系だけど日本語ぺらっぺらのフランス人男子とか、逆に見た目完全にチャイニーズなのにフラ語しか話せないフランス人男子もいたっけ*10。なつかしいですね。みんな元気にしてるといいな。
滞在許可証をもらってパリで暮らせることになったアフリカ人が母にあてた歌なのでしょうか。Tiken Jah Fakoly自身の境遇を歌ったものかそうでないかはわからないですが、歌詞のはしばしから、かすかな誇りと望郷と、二つの文化をまたいで生きるしたたかさみたいなものを感じました。
うん、なんかもうちょっと毎日がんばろ。つたないフラ語で生きてた逞しい時代の自分呼びおこそ。って気になりました。コロナ明けたらフランスまた遊びに行くぞ!友人いるし!
*1:どなたかTwitterでつぶやいてましたけど、議論って論破するためのものじゃなくて、理解を深めるためにするものなのにね...論破を狙っている時点で圧倒的な幼稚さを感じてしまう
*2:最近とみに感じることですが、多くの広告がなんとなく薄ら寒い感じで気持ち悪いんですよ。変な早口で冷笑なのかツッコミなのか私見みたいなものをまくしたてて、あとはキャッチフレーズで歌って踊っておけばOKみたいな。もう最近は教養のないイキリ野郎しか広告作ってないんか。企業側はそれでいいのか。お客様に顔向けできるのか
*3:I know the spades are the swords of a soldier, I know the clubs are weapons of war, I know that diamonds mean money for this art, but that's not the shape of my heart、ってくだりですね、いやーかっけー!この前にジャックとかキングとかクイーンとかも入ってるんですよ。わーかっけー!あやっぱいつかこれちゃんと訳そ。やりすごすにはあまりにもかっこいい歌詞です
*4:直球とみせかけて思いっきりミュージカル映画「巴里のアメリカ人」をもじっております。映画みたことないけど、ガーシュウィンの曲は心躍りますね。名曲 I Got Rhythm もこの映画に使われた曲のひとつです。
*6:アメリカ語でぼんやりした感じの英語教育しか受けてこなかった人はイギリス語で完全に詰むんじゃないかしら=私。イギリス人同僚がまじで何言ってんのか全然わかんなくて転職当時は毎日冷や汗かいてました
*7:このあたりクソ嫌味なイギリス人っぽくてたまらんですね
*8:ここを月月火水木金金とするかどうかちょっと考えて、戦時中じゃないからやめました
*9:家電量販店とタワレコが一緒になったような店。CDとか本とか大体なんでも打ってる。都心部とかターミナル駅近くにあった。マンガもゲームもここで買えるよ。ちなみに10年以上前の話でなんだけど、Mangaというコーナーは、ほぼ全て日本の漫画をフラ語訳したものなのである。帰国前のおみやげに名探偵コナンの当時の最新刊と、きょうの猫村さんの1巻を買って帰ってきたっけな。あるんですよフランスにも猫村さんw
*10:彼には仕事中にすれちがったときなぜか「キミガスキダトサケビタイ」ってスラムダンクの歌詞つぶやかれたことがあったんだけど、あれは告白だったのか?それほど仲良くなかったし、まじで謎です。割とすぐに転職してったから会えなくなっちゃったしな