Only Passing Through
それなりに長いこと音楽を聴いていると、たぶん自分しか好きじゃないだろ!と思える、メジャーではないけれどもMy Favorite Thingsなお気に入りバンドやアーティストがいるものです。
多感な時期や、記憶に残る特別な時期にうっかり聴き込んでしまったりすると、そうなります。
Idlewild(UK)*1、Talulah Gosh(UK)*2、Cat Power(US)*3、Miles(Germany)*4、Berry(France)*5、Coeur de Pirate(France)*6、それから何よりもSarah records(UK, Bristol)の愛しきバンドたち *7、などなど。
で、その筆頭というか未だに応援してしまうのが、The Lilac Timeというバンドです。
Stephen Duffy、まさかのデュラン・デュランを振った男*8がずーっと率いている、スコティッシュ・フォーク感あふれるキラキラのギターポップ、ネオアコバンドです*9
私がロックにはまり始めた時にラジオ*10で聴いて以来、ずっとこのバンドが好きで、この民族テイスト、英国っぽさ、ビスケットとミルクティーの香りがとてつもなく似合う、少女趣味感にしてやられたものでした *11
ネオアコで最も有名なバンドはアズテック・カメラ*12、あとはパステルズ、オレンジジュース、ペイルファウンテンズ、もっと後になるとラーズ、ベル&セバスチャン、あたりでしょうか。
私はそれらには全然入れ込めず、The Lilac TimeとTalulah Gosh、Sarah recordsのあれこれにどはまりしてましたね。
ネオアコほんとは好きじゃないんだと思います。
で、そういうレアな音源は、今ならApple MusicやYouTubeで音源探せるんだけども、昔はレコード屋にしか、しかもごく限られた枚数しか売ってなくて、しかも基本古い音源だから廃盤になってるのでもちろん中古で、大手から個性的な街の中古レコード屋まで、あれこれ覗いて回る毎日だったわけです。サークル活動なんかほとんどやってなかったけど、音楽のおかげで学生時代楽しかったな。
てか語り尽くせないほど思い出はあるものの、それはまたにして。
そんなThe Lilac Timeの数々の好きな曲の中で、どれを訳そうか迷ってしまうのですが。
カヒミ・カリィがカバーしていたBlack Velvetとか*13、夜中の高尾山*14で聴いたら風景に似合いすぎてわくわくしたTrinityとか、ど失恋でバイト行かなきゃいけなかった時に聴いたGrey Sky and Work Thingsとか*15、いつもこれが一番好きかもなと聴くたび思うWork for Weekendとかとか。*16
いろいろ候補はあれど、ふっと思いついたのがこれです。
Only Passing Through。
人生初の海外旅行だったカリフォルニアのサンフランシスコ・ロサンゼルスしかもアムトラックで縦断旅行*17でここのこと歌ってる!とその場で気づいて現地で聴くことができた、思い出の曲です。
サンフランシスコといえば中古レコード屋の聖地、Height Ashberyでもお買い物しましたよ。
とあるCDを1枚なんとなくジャケ買いしたら、後になんとあのバンクシーの花束ってやつじゃんこれ!と知るという。
あの頃はバンクシーまだそこまで有名じゃなかったんだと思いますが、さくっとジャケに採用?盗用?しちゃった某インディーレーベル(USに行ったのにUKのレーベルのCD買って帰ってきてました。アホや)、慧眼ですね。
え。今ぐぐってみたらCDですらオークションサイトで結構な値段ついてる…!*18
さて。そのOnly Passing Throughは、このベスト盤で聴けます。
Only Passing Through
通り過ぎるだけ
Only passing through
通り過ぎるだけ
Only passing through
通り過ぎていくだけ
We own this stuff briefly
ちょっと住んでいる気分を味わえたとしても
You can't take it with you
所有することはできない
You can't own the houses
君には到底手に入れられないよね
That will outstand you
この圧倒されるほど素敵な数々の住宅は
Only passing through
ただ通り過ぎることしかできないんだ
These houses and these streets
この素晴らしい住宅や街路の数々を
McAllister
マカリスター
O'Farel
オファーレル
California clay
カリフォルニアクレイ
Green
グリーン
Greenwich
グリンウィッチ
Chestnut bay
チェスナットベイ
Only passing through
通り過ぎるだけ
Only passing through
通り過ぎるだけ
We own this stuff briefly
つかの間だけそこの住人のふりができても
You can't take it with you
所有することはできない
As I walked out this morning
今朝ちょっと散歩に出かけた時さ
Before the sun was up
まだ日が昇る前だったよ
Everyone was sleeping still
だれもがまだ眠ってて
The curtains all were shut
カーテンは全部閉まってた
The world I found was wealthy
僕が見たのはリッチな界隈だった
More than we can afford
どうしたって僕らの手には負えないような
And all that is offered to us
僕らが受ける恩恵は
A miserly reward
ただ素敵だなってうらやむこと
Only passing through
通り過ぎるだけ
Only passing through
通り過ぎるだけ
We own this stuff briefly
この風景をちょっとだけ自分のものにできても
You can't take it with you
所有することはできない
本当にそうだな、と綺麗なパステルカラーに塗られた豪華な家々を眺めながら思いました。
最初の海外旅行だったサンフランシスコとロサンゼルスは、違う国に行くことはめちゃくちゃ楽しいんだよと教えてくれたとても恩義のある街です。
いつか住んでみたいなと今でもちょっと思ってます。こんな家には住めなくともね。
*1:まだやってるとは夢にも思いませんでしたがなんと解散後再結成してまだやってるらしいです。昔の曲はハタチくらいの学生にありがちな頭でっかち感がすご過ぎるのですがまさに私がそんな状態だった頃に聴きこんでいたし、なんなら歌詞をコピーしてノートに貼ったりしていたので、今でもめちゃくちゃ覚えてるんですよね。ちなみに私は大学時代に地理を専攻しており、冬の高尾山で気温観測という実習があったのですが、その時に朝4時が一番寒いなーとか思いながら"朝焼けなんて初めて見た"という歌詞が含まれているこのアルバムの"Let Me Sleep (Next To the Mirror)" という曲を口ずさんだりしていました。学生時代のお勉強、まじで楽しかったな。
*2:私ってネオアコが好きなんだ!と誤った認識を抱かせたバンド。このバンドも姉弟でやってるんでしたっけね。オアシスといい、なんか兄弟姉妹でやってるバンドに弱いのかしら。アルバムに歌詞カードはなかったので、必死に聞き取ろうと頑張りました。この頃の耳と根性があれば今仕事で困らないのに!って時々思います…タルラーゴシュって意味なに?わかんないけど?って思いながらもこちらも録音MDがいかれるほど聴きつぶしたアルバムでした
*3:こんな風に生まれたかったよー!と思う憧れ女性の一人ですね。声も容姿も完璧です。実は来日ライブにも行ったことがあります。とってもダウナーなゆるゆるライブで「スワテ クダサーイ」って観客全員体育座りさせられましたっけね。一緒に行ってくれた男性が確かポールスミスかなんかのスーツ着てて、代官山UNITの汚い床に座らせてちょっと申し訳ないなと思ったりしたものでした。
*4:Milesで検索するとジャズしか出てこないよ!この曲が有名です。ドイツのTahiti 80と呼ばれていたのにふさわしいリゾートサウンド。結構ロックな曲もあります。
*5:フランス滞在、特に語学学校のあるランブイエという地域の公園のことを激しく思い出させる、というか意識的に聴きまくってその時の空気とか感情を閉じ込めておいたアルバムです。全然メジャーじゃないけど、全曲本当に秀逸です。ストリングスが美しいMademoiselleという曲はまさにフランス女子にふさわしいコケティッシュ感があって、筆舌に尽くしがたい素晴らしさです。フランス入りした初日に泊まったホテルで何となく音楽番組つけてたらこの曲の最高なビデオクリップが流れてきて、速攻で曲名をメモりました。人並みに心細かった私をフランスが歓迎してくれてるかのように感じたものでした。ラッキーなことにライブも現地のオランピア劇場でみましたっけ。古くて小さくて独特の匂いがする素敵なコンサートホールだったな。
*6:Berryと違ってこっちは結構売れてるか。なんとApple musicにプレイリストありました。このアーティストの何と言ってもComme des enfantsは、歌詞がなくてねー…何言ってるのかほとんどわからないなりに現地滞在中は口ずさみたくて何度も聞きました。最近Appleに入ってたのみて初めて歌詞を知ったのですが、私の妄想歌詞とはだいぶ違ってたな。しかしこのジャケの顔写真、めちゃくちゃaikoっぽいですね。
*7:Sarah recordsはブリストルというイギリスの小さな街でひっそり生まれた、手仕事感のある、地元の若者がバンドを始めてどきどきしながらギターをそっと鳴らしてみたような、素朴で味わいある、とにかく私好みの要素しかない奇跡のレーベルです。最初は馬場のレコファンで奇跡的にGlass Arcadeのレコードを見つけたんだっけ。状態は全然良くなかったけどこれはあれだぞ、きてるぞ、お前が買うべきやつだぞ、と語りかけられた感じでしたね。そしてこれのおかげで学生時代はひたすら廃盤レコード探しに勤しみましたよ。今みたいにとりあえずググれば音源がある時代じゃなかったんで、ジャケやレーベルで曲の良し悪しを嗅ぎ分けることって音楽好きにはよくある行動でした。オアシスを排出したCreation recordsだって大御所だけどレーベルだしね。UKのELLEとかは特におしゃれで名前が知れてて渋谷系に人気でしたね。渋谷系といえばTrattoriaという私が敬愛する小山田圭吾先生が手がけていた国産レーベルもありましたっけ。渋谷系の曲は一応かなり聴いたし、好きなんだというフリもそれなりにしてみたけれど、どうも自分にはあんまりああいうおしゃれなのは柄じゃないなと気づいてもいました。渋谷系がネタにしている元の音楽はすごく好きでしたけども。ちなみにSarahの本拠地ブリストルは今の仕事に就いてからちょびっと関係することがなきにしもあらずな街になりました。早くコロナ明けて行く機会があればいいのにな。実はSarahのコンピレーションのジャケットはどれもブリストルの風景なんだそうですよ。ブリストルに行けたあかつきには私なりに聖地巡礼したいです。
*8:デュラン・デュランは振った1年後に大ブレイクしました。もったいなーいと思うけど、続けていたらThe Lilac Timeは存在しないわけだから、ありがとうDuffyという感じではあります。ところで10年ばかり前だったか、サークルの大先輩に連れて行ってもらったいまはなき洋楽カラオケバーで銀行の営業マン的な風貌のどこかのお兄さんが完璧にReflexを歌っていて、そこからデュラン・デュランが好きになりました。ありがとうどこかのお兄さん。
*9:今WikiみたらなんかDuffy一族のバンドみたいになってるぞ... 結成当時から兄のNickと兄弟でやってはいたものの、なんだこれ...
*10:宮子和眞さんという音楽ライターの方がNHF-FMで特集していました。未だに録音のMDあると思う
*11:実際、Astronautsというアルバムの国内盤の帯にミルクティーの香り漂うとか書いてありましたっけね。
*12:いつも言いたくなるんですけど、Blueという魚喃キリコの漫画が原作のとても素敵な映画がありまして。川内倫子のスチル写真と、市川実日子の瑞々しさがドツボに大好きなんですが、友人役で出演していた今宿麻美が、とあるクズ男のクズっぷりを"アズテック・カメラとか、そういうのが好きな男なんだよ"と評しているシーンがあるんです。映画館で声出して笑っちゃいましたね。
*13:このカバーアルバムではDilly Dally Dollyが素晴らしいです。ちなみに不思議なんですが、自分がフランス行ってみたらカヒミ・カリィさんのことはすっぱり好きじゃなくなってしまった。なんかを乗り越えたんだと思います。
*14:なんで高尾山かは1の注釈をご参照ください!
*15:天使が降りてきそうな曲で、実際そういうフレーズが歌詞にあったはず。当時住んでいた家の玄関を入るまで泣くの我慢してたことを覚えてますね。古い家だったけど玄関に飾りガラスがあって。あの家と飼ってた鳥のことすごく好きだったな。
*16:Paradise Circusというアルバムに入ってる地味な曲です。現地の若者の恋ってこんな感じなんだなって胸ときめかせたものでした
*17:大学生になって初海外だから割と遅咲きですね。数年後にフランス行っちゃう人とは思えません。そのうち留学するから下見に、という友人Nに私も連れてけ!と迫って無理やりくっついて行ったのでした。初の海外だったもんだから時差ぼけ酷かったな。先述のドイツのTahini 80と言われたMilesもその眠れぬ夜に"Hey it's OK, when the morning comes and you're still awake"という歌詞を夜通し聴いていましたっけ。友人ガン寝している横でむしゃむしゃ駄菓子貪りながら…笑
*18:これですこれ。色が可愛いので(Never Mind the Bollocks色ですが)壁に飾ってました。本物だよ!