ハナビ、

ハナが東京砂漠で綴るよたばなしです、英語歌詞翻訳はじめました copyright ©︎ ハナ 2009-2021 all rights reserved.

Audition (The fools who dream)

先の投稿@1/26で「週1くらいで」といいましたよね?

もう2月も2週めですが…?

という自分からのプレッシャーに耐えかねて筆をとる次第です。

(慣用句、実際はノートパソコンのキーを打つ)

 

さて、Auditionについて述べたからにはやっておかないと。

フェイ・ダナウェイ*1アカデミー賞でやらかしたことで有名な、映画ラ・ラ・ランドの挿入歌です。

ラ・ラ・ランド(字幕版)

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というわけでネットの大海原を探したらありました。このシーンです。

女優をあきらめて実家に帰っていたミアが、まさかのチャンスで受けたオーディション。

何か話してみてください、何でもいい。と言われて語り始めるのが冒頭です。

 

Audition (the fools who dream)

オーディション (夢見る愚か者たちに捧ぐ歌)

 

My aunt used to live in Paris

私の叔母は昔パリに住んでて

I remember she used to come home and she would tell us these stories about being abroad 

うちに時々遊びに来て、よく話してくれてたんです、外国に住むってどんな感じだったかとかを

And I remember she told us that she jumped into the river once

それで、彼女が川に飛び込んだ時の話を覚えてるんですが、

 

Barefoot...

裸足で…

She smiled...

笑ってて…

 

Leapt without looking

見もせずにぽんと飛び込んで

And tumbled into the Seine

セーヌ川に突っ込んだと

The water was freezing

川の水は凍ってて

She spent a month sneezing

一ヶ月もくしゃみしてたと

But said she would do it again

でもきっとまたやる、と言っていた

 

Here's to the ones who dream

夢を見る人に乾杯

Foolish as they may seem

ばかみたいに見えたとしても

Here's to the hearts that ache

傷だらけの心に乾杯

Here's to the mess we make

私たちがしでかすめちゃくちゃに乾杯

 

She captured a feeling

叔母は感覚をとらえた

Sky with no ceiling

天井のない空

The sunset inside a frame

フレームに閉じ込めた夕日

She lived in her liquor

酒浸りだった叔母は

And died with a flicker

一瞬のきらめきを残して死んでいった

 

I'll always remember the flame

私はいつだってその情熱を忘れない

 

Here's to the ones who dream

夢を見る人に乾杯

Foolish as they may seem

ばかみたいに見えたって

Here's to the hearts that ache

ぼろぼろの心に乾杯

Here's to the mess we make

私たちがやらかしたくそったれに乾杯

 

She told me:

叔母は言った

"A bit of madness is key

ちょっとした狂気があれば

To give us new colors to see

新しい色で世界が見られる

Who knows where it will lead us?

それでどこへ導かれるかなんて知ったことじゃない

And that's why they need us"

だからこそ人々には私たちが必要なの

 

So bring on the rebels

だから反旗を翻せ

The ripples from pebbles

小石からさざ波を立てろ

The painters, and poets, and plays

画家よ、詩人よ、俳優よ

 

And here's to the fools who dream

夢見るばかな奴らに乾杯

Crazy as they may seem

狂ってるようにみえても

Here's to the hearts that break

打ち砕かれた心に乾杯

Here's to the mess we make

私たちが生み出す混沌に乾杯

 

I trace it all back to then

あの頃の記憶を辿ってみると

Her, and the snow, and the Seine

叔母と、雪と、セーヌ川とを

Smiling through it

そっくり笑って思い出す

She said she'd do it again

きっとまたやる、と叔母は言った

  

英語的に難しかったというか、調べないとわからなかったのは、"Here's to XX" で「XXに乾杯」という表現です。辞書に載ってるけど。

 

あと、どうも意味がつかみ切れていないのはまさにそのつかむ=captureが出てくるこのフレーズですね…

She captured a feeling
Sky with no ceiling
The sunset inside a frame

She lived in her liquor
And died with a flicker

I'll always remember the flame

 

capture が何かをつかみとる感じがあって、a feeling、それが Sky with no ceiling と The sunset inside a frame なのか?それは飛び込んだ時の feeling なのか?それともその後のlived in her liquerの頃なのか?それはパリなのかパリ後なのか?

多分このあたりは韻を踏むために feeling -> ceiling、liquer -> flicker、後ろの I'll always remember the flame と掛けての a frame なのだろうけど、それは写真のフレームのような意図?それとも額縁?窓枠?天井と何の関係が?

flicker は品詞あるし e が入るから写真ストレージのFlickrじゃないけどこの with a flicker って何?慣用句??などなど、雰囲気はありそうだけどなんか情景がイマイチわからないぞ...とこんがらかりながら訳してました。

 

あとは多少ですが意訳気味になったのは mess。

混乱、しっちゃかめっちゃか、ぐちゃぐちゃ、めちゃくちゃ、みたいな意味だけど、つまりから騒ぎ感かなと思って "から騒ぎ" を引いたら "Much Ado about Nothing" という何だか大変懐かしい番組名(ていうか本来はシェークスピアの戯曲名...笑)が出てきました。

そしてから騒ぎの対訳は "making a fuss" らしいです。mess じゃなく fuss。

となると、もっと汚いもの(それこそ mess にはごみ、糞とかいう意味もあるようなので)になるから、f**k とか s**t を使わずクソ的な意味合いを表したかったのかな、などとも思い、2回目は「くそったれ」という言葉をあててみました。

3回目は、反乱の狼煙を上げろ的なフレーズの後なので、かっこよく響くのがいいなと思って「混沌」にしました。

しかし一口に make と言っても百万とおりくらいの訳語があてられそうで、便利な単語だなと実感し、かつ日本語の表現の多様さにも気づかされますね。

よく言われるように "I" だけでバリエーション相当ありますからね日本語...

でもその逆で、日本語では一言で済ますものを英語で百万とおりももしかしたらあるのかもだけど。

 

しかし、この話をパリで暮らしていた叔母のエピソードとして持ってくるのが秀逸ですね。

なにより叔母って立ち位置がいい。ちょっと遠くてでも頼れる、ほんの少し血が繋がっている近過ぎない身近な存在。親では直接過ぎてこうはいきません。

伯母さん叔母さん(伯父さん叔父さんも?)って全ての人類に必要かもなと思いますね。

 

私も一時期パリで暮らしていたことがあります(そして今や甥姪いるのでリアルにパリで暮らしていた叔母でもあるという)。ワーホリビザきた、フランス行っちゃえ、というかつての無謀な決意は、私にとってセーヌ川に飛び込む行為でした。

住んでいた当時はひたすら見ること感じることに夢中でしたが、あの日々の、いわば生状態のきらめきを時間とその後の人生あれこれで消化し熟成できたせいか、10年が過ぎた今になって、あの日々がじわじわと効いてきたように思います。遅れてきたほろ酔いです。

特に移動ができないこんな状況になると、ほんの短い間とはいえ、異国、それもパリに住んで、現地で働いて、旅をして、たくさんの人や風景や出来事にひたすら感動して過ごせた思い出があり、それを今ふりかえっても懐かしく、かつ色あせることなく味わえるのは、なんという贅沢なことだろう、としみじみありがたいです。

「パリは移動祝祭日」というヘミングウェイの言葉には完全に同意です。

移動祝祭日(新潮文庫)

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さて。最後にささやかに所感をば。

先日の投稿で述べたとおり、有名な冒頭のダンスより、ポスターになってる二人が踊るシーンより、このシーンこそがラ・ラ・ランドという映画の真髄だと、私は思うわけであります。

ラ・ラ・ランドは、芸を志し芸に人生を賭けて生きる人々、勝とうが負けようが、それに踏み出したことがある全ての人々の讃歌なのであります。

芸に身を賭した人々は、端から見たらばかなことをして、腹の足しにもならない、クソみたいなものを作っているかもしれない。けれどもそれがだれかに響いて "New colours to see"、つまりその人の世界の見方を変えてくれたり、それこそがその人の生きる糧になったりするのだ。That's why they need us (この "they" は文法の教科書の用例に出てくる「人々」を指すのでしょうね)、だからやってみてはくれないか。自分もやる、だから共にやろうではないか。そう力強く歌っているのであります。

混沌を作る側に強く憧れたけれども食っていくほど腕に覚えもなく淡々と社会生活を送っている私のような人間は、人生を賭けて芸事に身を投じた人々の姿勢には、おそれと尊敬の念しかありません。

習い事の師匠や先生にも、どんなに穏やかに見えても人生を賭けるほどの狂気と自分を信じられるほどの技巧があったのかと思うと、趣味とはいえど敬意を払って真剣に取り組まざるを得ないですね。練習はさぼりがちのくせに。

 

そして。こんな時期だからこそ。

混沌を生み出してくれる全ての人に感謝を捧げたいです。

願わくば、我々も彼らもこの苦境をどうか乗り越えていけますように。

*1:めちゃくちゃ好きな女優の一人です。もちろん一番有名なのは「俺たちに明日はない」ですが、個人的には「チャイナタウン」の哀感がたまらないですね...

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共演あのジャック・ニコルソンだし。俳優の中ではどんな美男や個性派を持ってこようが私の一押しは不動のニコルソンです。そして彼の「シャイニング」は好きな映画不動の一位。

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