Purple Rain
ボウイさんに続き。先日プリンスが亡くなりましたね。
ずっと前のブログでプリンスがカバーしたジョニ・ミッチェルのA Case Of Youに触れていたので少しだけ哀悼をこめてコメントしてみる。
自分のいちばんくらいに好きなアーティストのしかも最もお気に入りの曲をカバーされると、どんなに素晴らしくてもやっぱり大抵は「でもどうしたって原曲にはかなわないな」ってことになると思うんですよ。私みたいにこだわりが強いタイプは特に。
ところがこのA Case Of Youは「あ、こっちもいい。下手すると原曲よりいい」って思わされた私史上稀にみる最高のカバーだったのでした。
それまで私がちゃんと聴いたことがあったプリンスの曲は1999とKissとPurple Rainくらいでして。
まあKissとか超変な曲じゃないですか。
最初ウァンとかいううめきで始まり、歌ったらガチファルセットで、オチが♪ティリリリリリリリリ、キィッス♡とか小粋にまとめあげる。
謎すぎる曲ですよ。
しかもプリンスは私がプリンスを認識した当時はかつてプリンスと呼ばれていた名前のないアーティストなどと名乗り妙な記号使ってたりして意味わからんってかもはやキワモノの代表格みたいな感じでした、あくまでも私には。
そんなわけでプリンスとはしばらく距離を置いていた日々のさなか。ジョニ・ミッチェルのトリビュートアルバムが発売されたのでした。
大好きというかこの人がいたからこそそしてこの曲があったからこそ私は腐らずに女をやっていられるといったらさすがに大袈裟ですが、とにかくそんな誇張をしたくなるほど心動かされたA Case Of Youはさて、と輸入盤(しか売ってなかった)の小冊子をめくりました。
ふーん、カバーしてんのプリンスかー、テラテラした音になってんのかなー、と思いつつ再生したところ。
え、なにこれ。
ジャズじゃん?完全にジャズじゃん?
しかも超立派なジャズじゃん??
ニューヨークのコットンクラブで演奏されてそうなモノホンのジャズじゃん???*2
ロックとかポップスとかでいけいけだった人なのにあっさり本気のジャズ鳴らしてきよった。
あ、この人まじもんの天才なんだ、って7年越しくらいにようやく理解したのでした。
私は単にピアノが弾けるだけで特に曲作ったりとかしてないので完全に適当に述べますがね。
まず拍子が完全に変わっている。
きらめくピアノとベースを導入している。
カントリー風の女子の弾き語りがあたかもジャズのスタンダードナンバーに変身しちゃってます。
居心地のよい重厚なバーでウイスキー片手に聴きたいじゃんもうこれ。
何が言いたいかっていうと、曲を一回完全にバラバラにぶっ壊して作り直したようなカバーなのです。
かようにしてプリンスとの距離が一気に縮まりました。
それからとりあえずベスト盤を聴きましたね。
Little Red Corvetteとかちゃんと歌っぽいのも聴いてようやく、プリンスを受け止められる耳というか感性というか、が仕上がりました。
要するにです。
ピカソがあんな妙な絵描いたのは西洋絵画の技法をあっさりマスターしちゃって究極の絵画とは何かを探し求めていたからだったように。
数々の音楽的素養とかなんたらをきっとあっさりマスターしちゃったからあんな妙な曲作ってたんだね!と納得するに至ったのでした。
変幻自在の七色のアーティスト*4。
やっぱり早すぎる死だったと思います。
天国ではどんな音を鳴らしているのかしらね。
- アーティスト:スフィアン・スティーヴンス,ビョーク,カエターノ・ヴェローゾ,ブラッド・メルドー,カサンドラ・ウィルソン,サラ・マクラクラン,ジェイムス・テイラー,エミルー・ハリス,エルヴィス・コステロ,k.d.ラング
- 発売日: 2007/06/27
- メディア: CD
*2:大学院卒業旅行のニューヨークで調子に乗って訪れました。当時近隣都市に住んでた友人Nにさんざんつきあってもらって。Nと「超わかってるふりしようよ」「イイね」って腕ぐみして聴いてました。とはいえわかってるふりしなくてもあっさりうおお、ってなりました。本当にいいものだと素人にもよさがわかるんさね。あと両親を連れてきたらしい9歳くらいの男の子のお客さん(連れられて、ではない、彼が連れてきたのである)がステージに上げられて本気でドラム叩きだしたら止まらないしプロ並みにうまいしでお客さんじゅう大拍手だったな。いい思い出。
*3:以前書いた気がしますが、大学時代に脱構築というたら上旬の友人Nとの間でセックスしたということを指していましたっけ。青いですね恥ずかしいですね。←淀川長治調で
*4:処でジョジョのキャラとか色づかいがときどきプリンスを彷彿とさせるんですが気のせいか。どなたか何か関連情報ご存じでしたら教えてください。いやggrksですかね。