ハナビ、

ハナが東京砂漠で綴るよたばなしです、英語歌詞翻訳はじめました copyright ©︎ ハナ 2009-2022 all rights reserved.

Pour être heureux!

ミシェル・ルグランが亡くなったそうです。

シェルブールの雨傘」は最も有名でしょうが「ロシュフォールの恋人たち」の溢れる音の洪水も忘れられません。

オリーブ少女たちの憧れカルチャー映画であるゴダールの「はなればなれに」でも、壊れたおもちゃ箱のように軽やかなテーマ曲を奏でてくれました。

このブログのどこかで絶対泣いてしまう映画のワンシーンとして「シェルブールの雨傘」のラストをあげました。

何が悲しいって、それなりの幸せに包まれていても、かつて心から欲しかった幸せはもう絶対に手に入らない、後戻りができないところまで既に人生が進んでしまったということなんですよね。

戦争によって引き裂かれた若い二人。
失われた彼らの愛と夢と希望。
どんなに年月が過ぎても、それらの不在と喪失は、二人の人生にそれぞれひっそりと影を落とし続ける。
二人が互いの子どもにつけた名前がまさにその象徴です。
生きている子どもでありながら、すでに死んだ愛の形見でもある。
毎日呼ぶことになる子どもの名前に、かつての恋人たちの幸せだった日々の片鱗を残すことの意図はなんなのか。
おまけにドヌーブ演じるジュヌヴィエーブの子どもは事実元恋人のギイの実子であるのだから。
毎日子どもの名前を呼ぶたびにかつての恋人とその不在を実感するのではなかろうか。
むしろそうしたかったのかもしれませんね。
忘れたいのではなく忘れないという意志なのかも。
過去の幸せだった日々と、何処かで生きている相手に誠実であろうとする故の。

ロシュフォールの恋人たち」は打って変わって超明るい雰囲気です。
カラフル、ポップ、最初から最後まで夢と希望と愛と歌とダンスにこれでもかってほど溢れてて、みんながみんな、しらじらしいほどハッピーになります。
あいつもこいつもくっついちゃって、まあうまくできてること、的な。
シェルブールが悲劇だったから今度は明るい映画を撮りたかったと監督が言っていたと、どこかで読んだ気がします。
ロシュフォールのサントラのライナーノーツだったかな。

冒頭でかかる「キャラバンの到着」は、かつて車のCMに使われてて、十数秒のうちに曲名のクレジットが出ないかどうか目を凝らして必死に探したのを覚えてます。
当時は今ほどネット社会じゃなかったから曲名なんかすぐわかんないんですよデジタルネイティブの皆さん。
CD屋に行って店員の前で下手したら歌うとかあったんですよ。
しかも店員もそれがわかるくらい音楽オタクであることを期待されるという…
(実際店員に歌ってる人見たことあります。おいそれ普通にビートルズやんけ!って店員でもない私が心の中で突っ込むくらいそこそこメジャーなビートルズの曲でしたが。Get Backとかそのくらいの)
まあとにかく頭の中をその曲でいっぱいにしたくなるくらい、超絶かっこいい曲だったんですよ、当時の私には。

東京は阿佐ヶ谷にある40席くらいしかない小さな映画館でロシュフォールを上映した時には、諸手をあげて観に行ったものです。
感動のあまりリマスターされたサントラを購入し、6畳の狭い自室で、何度も何度も繰り返し聴きこみました。
「夏の日の歌」はフランス語大して習ってないうちからそこそこ歌えてましたっけ。
思えば「愛せよ、歌えよ」という歌詞は、シェルブールのようなわかりやすい悲劇ではないにせよ、かつて悲劇があったからこその、悲痛な願いが込められたものだったのかもしれません。
ロシュフォールの明るい日差しで、悲劇の影を全部消して回ったような、幸せに満ちた映画でした。

この2つのミュージカル映画には、ルグランの音の魔法がアイシングの砂糖のように、全編にわたってもれなくふりかけられています。
時にはスパイスやお酒をきかせつつ。
ひと匙味わうだけで、たちまち魔法のように映画の世界に没頭させられる。

私をわざわざフランスまで連れ出してくれて、ありがとう。
おやすみなさい、天国で。

フェミニズムと食あたり

ずっと以前に書いて放置して今更アップですがしかし。2018年に何も書かないのも良くないからという言い訳投稿です。

10/11は世界ガールズデーだったそうで。
フェミニズムが不快感を催す言葉になりさがっている、なぜなら女性だけが自分の権利を声高に叫んでいるように見えるから、と国連でエマ・ワトソンさん*1が立派なスピーチをされたそうで。
トゥイッター辺りでばずっておりました。
そりゃーもっともなことだと思います。

が。

なんかお前に言われたくないよ感がわいてくるのは何でなんすかね。
綺麗で賢くて地位も名声もあって愛されて育ちましたとか言われてもああそうかい、じゃあ恵まれてるアンタには一生酷い場所で暮らさざるを得ない人たちのことなんかわかんねえわ、としか思えません…

同じ女性ならブリトニー・スピアーズさんあたりに言われたいですねむしろ。
クソな野郎*2が多いのは確か。特にギャラの面でも女は不利だしね。けどあきらめないで。素敵な奴らもたくさんいるさ。男性の皆もさあ声を上げて。アタシ達なら一緒にもっといい世の中にしていけるよ!
とか言われた方が説得力百万倍なんですが。
まあ国連だから型にはまった綺麗なお嬢さんのほうがそりゃいいんでしょうよ…
そのうちイギリス王室に殴りこんだあの元女優あたりがスピーチしてくれると面白いなと思ってたんですが、もうしてるやんけ。
https://youtu.be/WBdqP84syLM
生い立ち経歴が偏見打破を体現してますよね*3

話はそこじゃなくてですね。
フェミニズムとは何かですね。
フェミニズム=女性の権利を振りかざすことでは勿論ないですね。
そう思ってる人の知識はウーマンリブ全盛期の1960年代あたりのタイプライター使ってるがごとくに錆びついてますね。
フェミニズムの定義を件のエマさんのスピーチさんから取ってきますと。

"The belief that men and women should have equal rights and opportunities. It is the theory of the political, economic and social equality of the sexes."

ネイティブじゃないけど訳してみますと、
“男性と女性が同等の権利と機会を持つべきだとする信条。政治的、経済的、社会的にいずれの性も平等であるという理念”

ということはですよ。
プレゼンターは男性でもいいじゃん?
ジェイ・Zさんあたりがやる方が俄然かっこいいし、はるかに啓蒙になると思います。

…今最高にクールな男性セレブが誰かわかんないので、取り急ぎセレブってるジェイZを持ってきてみたんですが。
もはやドレイクさんあたりですかね。

私としては。
性差を超えて、人間が当然与えられるべき権利を享受して生きられるよう、社会及び個人が寛容であろうと努めること、的なものだと思っております。

要は性別はどっちでもいいんです。
ただし女に生まれてみると色々あります。
男性が思ってるのの数十倍そういう目にあっています。
女性に生まれて良かったなと思うのはトイレで常に個室が使えることくらいです。
他人に性器を見せず大だとか小だとか生理だとかを知らせることもなくプライバシーを保てるのは仲々ありがたいです。
特に私は胃腸が弱いので、マジでそう思います*4

夜遅くに道を歩くのにかすかな恐怖をずっと感じるとかないですよね?
子どもの頃に変態に誘拐されるかもとか、海外に行った時スリにあうかもとか、そういうのと同じような、起こるかどうかわからないけど気をつけざるを得ないかすかな恐怖ですが。
それが「犯されるかも」なわけですよ。

「犯されるかも」という恐怖は、性的に暴行されたとか暴行まではいかなくとも危険な目、不快な目にあった経験がないと恐らくわからないのではないかと。
*5

かように普通に生きるだけでも若干のハンデなのに、性別を理由に就職やら昇進やら、つまり金目の話で差別されたら噴飯やるかたなし、もう裁判もんじゃねえかと思ってもいいわけですよ。
東京医大の件のように明確なディスでなくとも、地味に流れる空気やムードが差別だったりするんですよ。
その上差別の担い手が異性ばかりでなく同じ思いを共有できるはずの女性だったりもするという。

まあしかし。
男性なら生きやすいということも勿論ないわけで。
月に向かって「僕の童貞をあげよう」とか叫ぶ少年の話が川端康成の短編にありましたけども。*6
月に向かって童貞よ♡…
全く共感できないけど、なんか男性って大変なんだなと少し同情しました@16歳くらいの私。
もし私が男性で、いわゆる男性らしさを求められたらきっと吐き気がしますね。
「こうあるべき」という意味のない同調圧力が大変苦手なもので…*7

女性への気後れや、嫌でも性の対象として女性を扱うことの生物学的どうしようもなさなどは、まあ仕方ないと思わないでもないです。

ですが。
どうか男性嫌悪の女性に対しては、きつくあたらないでほしいなとは思います。
男性が性の対象として女性を見るのと同じように、女性は危害を加える恐れのある対象として男性を見ます。
これもまた生物学的反応ではないかと思います。
男性嫌悪はこれがアレルギーレベルにまで達した女性たちです。
そりゃ同じ空間にいられないですよ、恐怖で。
だけど男性側の論理としては「自分は善き人間である。変態と一緒にするな」と思いますよね。
ごもっともです。

そこで。

理解してもらえるような例えを出してみようと思うわけです。

名づけて「牡蠣の食あたり理論」。

牡蠣はおいしく滋養が豊富な食材です。
煮ても焼いても美味しいですが、特に生食はそれはそれはとてもおいしい。
海のミルクとも呼ばれています。

ですが、生食はあたることがあります。
全ての牡蠣があたるわけではなく衛生管理もしっかりさえていても、それでもなおあたることがあります。

一度牡蠣にあたってしまったら、また食べたいと思うまでには大変に勇気がいるそうです(私はあたったことないのですが)
全ての牡蠣が悪いわけではありません。
しかしあたるときはあたるのです。
なぜなら全ての牡蠣にはそれなりにあたる可能性のあるものが含まれているのだから*8
だからあたりたくない人は牡蠣を避け、あまつさえ「牡蠣は危ない!ダメ絶対!!」とか声高に叫んだりするわけですよ。
この過剰反応、牡蠣漁で生計を営む人々にとっては恐怖でしかないですよね。
そして牡蠣漁師と牡蠣反対論者との仁義なき戦いが幕を開けるのである。

もとい。

女性にとっての男性は、あたる可能性のある牡蠣のようなものである。

とまあ私はこんな風に考えているんですが。
共感していただけますかねコレ。

あ、私は牡蠣大好きですちなみに。

*1:よく考えたらこの人ワトソンさんじゃないか。気づかなかったよホームズくん

*2:ブリトニーさんなんか最初は結婚まで処女路線だったんですよ?それをあの才能あるけどクソ野郎のジャスチンチンバレイクがヤったと暴露しやがってからのアレですよ。あいつは一体何様なんでしょうか。インポだと思われたくなかったんでしょうか

*3:バツイチ有色人種との混血ハリウッド女優その上育った家庭が崩壊してて親父がアレだったり姉と絶縁してたりするのがまた味わい深い

*4:未婚子なしなので特にそうかもですね。母親になった人は女性に生まれて良かったと思うものなのでしょうか

*5:時々男性から「痴女にあったけど別に」という意見もあるようですが、この場合は人権侵食感が薄そうだからあまり匹敵しないのでは。もし男性が痴"漢"にあっても同じことが言えるかどうかですかね

*6:多分ここに収録されていたかと。別の短編に「小女郎(こめろ)」という言葉が使われていて、高校時代に親友とそのネタでひとしきり笑ったものでした。

掌の小説

掌の小説

*7:これは教育の成果とかではなく、完全に生まれつきです。3歳くらいの頃に予防接種で泣き叫ぶ周りの子を見て愚かしいなと思って絶対泣かなかったとか、幼稚園の頃に皆がピンク色が好きというのでピンク色が嫌いだったりとか。クソど田舎で育ったから周囲に馴染めなかっただけかもしれませんが

*8:って「もやしもん」で言ってました。ちなみに牡蠣は海をきれいにしてくれるそうな。食べてもうまいとかすごいですね

Like a Rolling Stone

ボブ・ディラン氏が受賞するする詐欺で結局受賞したけど先約で受賞式ばっくれとかいう新たな芸風で世間をにぎわせているノーベル文学賞です。

ちょっとした事情で彼の代表作であるLike a Rolling Stoneを和訳することになりました。
せっかくなので載せておきます。

[ハジマリ]

Like a Rolling Stone

Song by Bob Dylan
Lyrics from Google Play Music
Translation by ハナ ©︎ 2016 all right reserved.

Once upon a time you dressed so fine

Threw the bums a dime in your prime, didn't you?

People call say 'beware doll, you're bound to fall'

You thought they were all kidding you

You used to laugh about

Everybody that was hanging out

Now you don't talk so loud

Now you don't seem so proud

About having to be scrounging your next meal

かつてはぴかぴかにめかしこんで
乞食に小銭を投げてやったじゃないか
あんたの全盛期にさ
口々に言われたな
気を付けろよマネキンさん
今に転落しちまうぞ
みんなからかってるんだと思ってた
うろついてるやつらを笑ってた
今は大きな声じゃ話さない
今は自信満々にゃ見えやしない
明日の食いもんをたからなきゃいけないんだから

How does it feel, how does it feel?

To be without a home

Like a complete unknown, like a rolling stone

どんな気分だい
どんな気がするかい
宿なしになるってことは
名なしの誰かになるってことは
転げ落ちる石のように

Ahh you've gone to the finest schools, alright Miss Lonely

But you know you only used to get juiced in it

Nobody's ever taught you how to live out on the street

And now you're gonna have to get used to it

You say you never compromise

With the mystery tramp, but now you realize

He's not selling any alibis

As you stare into the vacuum of his eyes

And say do you want to make a deal?

とびきりぴかぴかの学校に行ってたって
いいじゃないかミス“孤独”
でもただラリってただけだよな
路上で生きてくすべなんて
誰も教えちゃくれなかった
でも今は慣れなきゃいけない
怪しげな浮浪者なんかお断りって言ってたが
今や思い知ったんだ
あいつはアリバイを売っちゃくれない
あいつの空っぽの目を見つめて
あたしとやるかい?って聞いたときに

How does it feel, how does it feel?

To be on your own, with no direction home

A complete unknown, like a rolling stone

どんな気分だい
どんな気がするかい
天涯孤独になるってことは
帰る家なんかないってことは
まったく誰にも知られない
転げ落ちる石のように

Ah you never turned around to see the frowns

On the jugglers and the clowns when they all did tricks for you

You never understood that it ain't no good

You shouldn't let other people get your kicks for you

You used to ride on a chrome horse with your diplomat

Who carried on his shoulder a Siamese cat

Ain't it hard when you discovered that

He really wasn't where it's at

After he took from you everything he could steal

ジャグラーやピエロがあんたのために芸をしても
しかめ面さえ見せず振り向きもしなかった
そんなことするもんじゃないってわかってなかった
あんたの都合で他人を蹴とばすべきじゃない
昔はシャム猫を肩にのっけた元締めと
ピカピカのメッキをしたお馬さんに乗ってたな
辛かったろう、あいつが本当はひとかどの人物じゃないって気づいたときは
あんたからむしりとれるもの全部持ってっちまった後で

How does it feel, how does it feel?

To have on your own, with no direction home

Like a complete unknown, like a rolling stone

どんな気分だい
どんな気がするかい
身一つで生きるってことは
家路なんかみつからないってことは
転げ落ちる石のように

Ahh princess on a steeple and all the pretty people

They're all drinking, thinking that they've got it made

Exchanging all precious gifts

But you better take your diamond ring, you better pawn it babe

You used to be so amused

At Napoleon in rags and the language that he used

Go to him he calls you, you can't refuse

When you ain't got nothing, you got nothing to lose

You're invisible now, you've got no secrets to conceal

見ろよ教会の塔のてっぺんにいるお姫様やら洒落者たち
あいつらみんな酔っ払って
自分はうまくやったと思ってる
高価なプレゼントを交換し合ってさ
でもそのダイヤのリングはとっといた方がいいぜ
そいつを質に入れてこいよ
ボロを着たナポレオンをえらく面白がってたっけな
奴がコールしてきたらあんた断れないぜ
何にも手に入らねえときはな
何にも失うものがねえときはな
あんたはいまや透明人間、隠す秘密なんかどこにもない

How does it feel, ah how does it feel?

To be on your own, with no direction home

Like a complete unknown, like a rolling stone

どんな気分だい
ほらどんな気がするかい
天涯孤独になるってことは
帰る家なんかないってことは
まったく誰にも知られない
転げ落ちる石みたいに生きてくってことは

[オワリ]

訳してみてはじめてこんな曲だったんだってわかりました。

落ちぶれた売春婦になってしまったかつての高級コールガール*1をおちょくる歌なんですね。

たぶんこの時代のイケイケムードでガンガン路線だったアメリカへの皮肉だったりするのかなと推察します。
冷戦、キューバ危機*2ケネディ暗殺、ベトナム戦争
戦争という悪どい手段で富を得るアメリカの、その虚飾がはがれた後に残るものはただの貧困と孤独である、アメリカはやがて病むという"ぼんやりとした*3"予感のようなもの。
それをこういう比喩で歌にして、さらにアコギをエレキギターに持ちかえて高らかに響かせた。
ローリングストーン誌の歴史に残るロックの名曲500リストのトップに来るのも納得。
ノーベル文学賞もんの音楽革命ですね。

ただライナーノーツを読むとディランはいつも単になんとなく作っただけだし、とにかく自分の作品を分析するような風潮はアホじゃねえかと公言していたそうなので、つまりはノーベル文学賞についてもアホじゃねえかと思っているからあの態度なんでしょうね。
講演?なにそれ。やってられるかくだらねえ、的な。

所詮私のつたない英語力とあふれる妄想力によるものなので、一部意訳しすぎたり誤訳だったりしているかもしれません(特にコールガールのあたり。どこのサイトあたっても上流階級の娘とされているので)。
詳しい方がいらっしゃればご一報くだされば幸いです。

トレイシー・チャップマンのFast Car*4ルー・リードのPerfect Day*5も同じタイミングで和訳したのでいずれそれらも載せます。

万が一これを見たら同僚にアカウントがバレそうですが。
こっちにはまともなことしか書いていないですし、どうせこんな人間であることがばれかけているので構いません。

ちなみにちなみに。日本語のライナーの歌詞間違ってますね。
冒頭、dressed so fineのはずがso findになってました。

Like a Rolling Stone

Like a Rolling Stone

  • 発売日: 2014/10/03
  • メディア: MP3 ダウンロード

*1:3節目を意訳。your diplomat=シャム猫を肩に乗っけたあんたの外交官≒コールガール組織の元締めと考えました。あと大道芸人見世物小屋の連中を見下して振り向きもしないというくだりでも、本質的には彼らと同類ってことかもと感じたため

*2:昨年キューバに旅行するにあたって歴史をちょっと調べたらケネディが極悪非道にみえましたよ…私の大好きなルー・リードの歌には「ケネディが死んだ日」って曲あるからきっとリベラルで素晴らしい政治家だったんだろうなと言うイメージだったのですが…片方の面からしかものを見ない弊害ってまじ怖いですね

*3:もちろん芥川龍之介の遺書からの引用です。自殺の理由を「ぼんやりした不安」って表現するなんて格別ですね。さすが天才。それにひきかえ三島由紀夫は遺書も辞世の句もくどかったし自殺の方法もアレだしうーん。ファンが多いのも評価が高いのも三島由紀夫で、それこそノーベル文学賞を貰いそこねた人物ではありますが。かわりに彼の師匠の川端康成が受賞したというのは一部で有名な話。ちなみに川端氏の講演タイトルは「美しい日本の私」ですが、数十年後に大江健三郎氏が受賞したときそれをもじって「あいまいな日本の私」ってしたのすげえユーモアあってすげえクソワロと思います。まあつまり、ぼんやりとした、とか、あいまいな、ってのがいかにも日本らしいんじゃないかなと私はさらに思います

*4:これは本当に、どうにもならない社会に胸が痛くなるほどのとてつもない歌詞です。涙すら値しない。

TRACY CHAPMAN

TRACY CHAPMAN

  • アーティスト:CHAPMAN, TRACY
  • 発売日: 2002/10/01
  • メディア: CD

*5:私のベストライブはこれからもずっとルーリード@東京厚生年金会館です。生のルーリードに間に合って本当に幸せでした。

TRANSFORMER-UPGRADED VERS

TRANSFORMER-UPGRADED VERS

  • アーティスト:REED, LOU
  • 発売日: 2003/01/06
  • メディア: CD

Spotlight

かように音楽のことばかり綴っておりますが、実を申せばグラミー賞よりアカデミー賞派です。

確実と言われた作品がまさかの番狂わせで獲れないとか*1
ディカプリオさん今年も主演男優賞獲れないとか
誰が失言で炎上するかとか
昔ハードボイルドで鳴らしたイケメンでも鬼畜おじいちゃんが何歳まで賞獲りレース続けるのかとか*2
映画評論家の町山智浩さん予想がどんだけ当たるかとか

オスカーにはそういう楽しみ方があるんですよ!

いや、あったんですよ…

ディカプリオさん今年遂に受賞しちゃいましたね…
彼の映画界での立ち位置を象徴するような地獄の淵からこんにちは映画で…
アイル、ビー、バーック*3ってかアイヴ、ビーン、バーーーーーーック!!!!!
ですよ…

3度目ならぬ6度目の正直。
通常の正直の2倍かかってますね、相当な真っ正直ですね。
なんせ一回引退までしたのに復帰して賞さらいにきましたから。
ここで受賞しなかったら町山さん曰く「怖い」「もう何をされるかわからない」ほどになっていたわけですよ*4

アカデミー会員様はスターがお嫌いらしいです。
日本で人気のハリウッドスター様。
ブラピ様、ジョニデ様、そしてあのトム・サイエントロジー・クルーズ様。
みいーーーーーんなオスカーの主演男優賞には*5ご縁がございません!
(全員ノミネートはされてる、それが余計気の毒)

余談ですが私はアルゴ以来ベンアフ好きなのですが、彼は数年前アルゴで監督として作品賞獲ってますが監督賞は獲れなかった、どころかノミネートもされなかったんですよ。
JLoさんといちゃつきすぎて干される等の辛酸なめてますから。
その結果、史上稀にみるオスカーノミネートなしの全米監督協会賞受賞者になってました。*6
選考委員ってか風紀委員じゃねーかヲイ。

アカデミー賞の選考委員って?
http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000115871

町山さんが語るアカデミー賞とディカプリオ
http://machiokoshi666.blog.fc2.com/blog-entry-50.html

町山さんによる今回の振り返り(クソワロ)
http://miyearnzzlabo.com/archives/36341

その名のとおりガチのアカデミック。
つまりは保守系老害政治家のような(失礼)。
もしくは「あーらハナさんったら少し煮物のお味が濃いようじゃございません、最近の若い人は何ですのほら、化学調味料とかお使いになるようですし、あたくしどもの時代にはコンブにかつぶしにシイタケしかなかったもんでございますからね、いやあねえ年よりは味覚が古くってごめんなさいね」とかいう嫁いびりお姑さんのような(これまた失礼)。

はあはあ。日暮れて本題遠し。

要するに何が言いたかったかっていいますとね。
そんな文字通りのアカデミック老害が選んだ去年いちばん面白かったアメリカ映画=アカデミー作品賞が、本日のタイトルの「スポットライト 世紀のスクープ」なんですよ!

だけどゴールデンウィークが10連休になったもんだからさすがにレジャーらしいことしたくってとりあえず映画でもみようかってなってたぶん10年ぶりくらいにわざわざ映画館にみにいったんですよ!
もうこないだ映画館でみたのなんていつだったか覚えてないよ!*7

かように今までディカプリオさんで盛り上がってきたのに何で受賞作のレヴェナントじゃなくてこっちにしたかってそれはね、ディカプリオ映画が3時間近くもあるからなんですよ!!!
長いよ!!!!!*8

という消極的な理由でみたにもかかわらず。
2時間が40分くらいにしか感じられないほど夢中になってしまった。
保守老害(超失礼)の太鼓判だろうが何だろうが。
本当に素晴らしい映画でした。

****

スポットライト 世紀のスクープ
http://spotlight-scoop.com

さっくりなあらすじを述べますと。
かなり忠実に実話に基づいた映画だそうです。

ボストンが舞台。
2001年にゲーガンという神父が少年を性的に虐待した罪で訴えられていたが、裁判の結果、示談になったという事件が地元紙ボストン・グローブの小さな記事になった。
その神父は過去にも同様の性的虐待で訴えられていた。
記事は、示談にしたらまた同じことが起きるだろう、と締めくくられていた。
そこへマイアミから来た新しい編集局長が着任。
この事件を掘り下げて取材するよう指示する。
カトリック教会絡みの案件には触れないのが地元では暗黙の了解だったが、よその土地から来たユダヤ系の新編集局長にはそんな縛りはなかった。
“スポットライト”と呼ばれる特集欄を担当するチームの5人が調査を始める。
やがてその神父に限らず、他の神父も含めた何百件にものぼる性的虐待と教会ぐるみの隠蔽工作が明らかになる。

神父らは、
貧困家庭で、
父親がいない、
内省的な子を、
選んで餌食にしていた。

訴えられるリスクが小さく、たとえ訴えられても立場が弱いために金で解決できる家庭の子どもを選んで虐待していた。

文字通りの聖職者がこの上なく卑劣な人権侵害を組織ぐるみで行っていた。
そして同じ地域の人間は地元では絶対的な信頼と権力を持つ教会内部にメスを入れることは決してなかった。

記者らは地道な聞き込みや気の遠くなるような調査や内部への探りや圧力との駆け引きや自身の葛藤や9.11に配慮した公開の遅延やとにかくいろんなものに長期間にわたって取り組み続け、確たる証拠を集めて、記事にする。

記事が刷り上がった日曜の朝の編集局がラストシーン。

****

いや本当にすごい話でした。
神父の罪を暴くのではなく、システムを糾弾して改善することが記事の目的で、それを成し遂げた。
事実であるからこそ感動もひとしおでした。

まずボストンがこれほど保守的な都市だとは思いませんでした。
先進的な学園都市ってイメージでしたから。

過去の裁判の証拠書類である公開資料が裁判所内部であっさり紛失してるんですよ。
ガチ隠蔽です。

学校にも神父がいて、部活まで受け持っていたりするとか…でもこれはカトリック系の私学校には普通のことなのかな?
しかしそこでも虐待起きてます。

この種の人権侵害は、ありとあらゆる集団内で発生するし、弱い立場の者が狙われるし、権力によって隠蔽させられたり羞恥心から自分で隠蔽してしまうことが多々あるのは知っています。

それが教会によって行われた場合、それが信仰を脅かす二重苦になると被害者が語っていました。

だから被害者は皆「生き残った者(survivor)たちなんだ」と。

この驚愕ばかりの映画中で、私がいちばん驚いたのは、そのように死ぬほどの苦しみを受けてもなお「でも信仰は別なんだ」と語った、別の被害者の言葉でした。

子どもが自殺するほどの精神的苦痛を受けながらも捨てなかった信仰とは何なのか、その強さはどこから来るのか。

結婚式でクリスチャンになって葬式で仏教徒になる大半の日本人(含む私)には、信仰とはどんなものか正直理解しがたいです。

発想の転換とか、周囲の愛情とか、自分への自信とか、未来への希望とか、もしたら皮肉にも信仰そのものが、被害者を生き残らせたのかもしれない。

妻も子どももいるんだ、メモはいいが実名はやめてくれ、と取材の冒頭で嫌がっていた彼が、取材が終わって去り際に、名前を出してもいいよ、とそっとつぶやいたのも印象的でした。

最後に。

スポットライトというのは実際の特集欄の名前なんでしょうが、ラストで明らかになったチームのデスクにまつわる事実とそれに対して編集長が述べた「光が当たるまでは…」というひと言。
脚本賞受賞もなるほどと思う素晴らしい台詞でした。

私もこのような組織ぐるみの隠蔽や人権侵害を、無意識どころか意図的にも見過ごすことがあることはよく自覚しておきたいと思います。
その上で個人ではなくシステムを改めるよう動きたいものだなと感じます。

派手な演出も斬新な特殊効果も素敵な音楽も使わずスター俳優さえ起用しない。
でもきっちり作品賞と脚本賞
納得です。

あ、あと撮影監督が日本人です。
マサノブ・タカヤナギさん。
世界にひとつのプレイブック*9撮ってる!たしかにあのすっきりきれいにみせる光の感じ。すごいなあ。

町山さん解説もありました
http://miyearnzzlabo.com/archives/31555

やっぱ映画は映画館でみないとね。
お茶飲んだりスマホいじったり関連事項ぐぐったりせず映画そのものに没頭できるからね。
トイレを気にせずビール飲みながら人を駄目にするソファにおさまってみる名作も止められないけど笑

いやー、映画って、本当にいいもんですね!
水野晴郎の名言より)



処でちょっとしぼむ後日談。
この新聞社購読者減少により売却されてますね…
だからラストのクレジットにレッドソックスの名前があったのか…
世の中難しいね…
http://www.afpbb.com/articles/-/2959764?act=all


スポットライト 世紀のスクープ (字幕版)

スポットライト 世紀のスクープ (字幕版)

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*1:主にブロークバック・マウンテンの悲劇を指す。作品賞のプレゼンターだった大大大好きなジャック・ニコルソン様がついwhat happened?って言っちゃった案件です

*2:やだおじいちゃんったらまだ殺る気… http://eiga.com/news/20160317/16/

*3:カリフォルニア州知事

*4:ディカプリオさんの実力からして獲れないのは圧倒的におかしいです。他の方々もそらおいしくいただける高級フレンチ級のお芝居ですがディカプリオさんは宮廷料理ばりのフルコースにまで仕上げてきます。どんだけ基礎が違うかは若き日のジョニデと共演してたギルバート・グレイプでもみるよろし。下手に昔お顔が可愛かったもんだからタイタニックなんかに出てアイドル扱いされちゃってかつ本人も調子乗ってましたが俳優としてのキャリアを鑑みると逆に可愛かったお顔が邪魔しちゃった感ありますよね。あ、ちなみに私タイタニックみてません。

*5:ブラピ様はそれでも夜は明けるの製作で作品賞獲ってますね。ベンジャミン・バトンは素晴らしい挑戦でしたが相手が悪かったですね。ショーン・ペンハーヴェイ・ミルクじゃ勝てないよー。あとブラピ様はやっぱり嫁がすごいですね。

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*6:これな。 http://m.elle.co.jp/culture/celebgossip/Ben-Affleck-Wins-Directors-Guild-Award-for-Argo-I-m-on-My-Way-13_0205

*7:こないだ彼氏がいたのいつだったか覚えてないのと一緒だよ!だってほら映画館行かなくてもTSUTAYAとかWOWOWとかHuluとかで好きな映画もおまけにドラマもみられるじゃん≒彼氏いなくてもほら…うん…言わぬがハナ

*8:まあでもやっぱみにいこうと思いますよ一応。なんかほら、熊に襲われるとこみたいし。

*9:超余談ですがこのタイトルをプレイブックじゃなくてプレイバックだと間違えてましたね〜。ジェニファーローレンスの仏頂面が光ってました。人格障害すれすれのShall we ダンス。いい映画です。あとデニーロの無駄遣い具合がすごくてもはや津川雅彦w

世界にひとつのプレイブック (字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

Purple Rain

ボウイさんに続き。先日プリンスが亡くなりましたね。


ずっと前のブログでプリンスがカバーしたジョニ・ミッチェルのA Case Of Youに触れていたので少しだけ哀悼をこめてコメントしてみる。
 
自分のいちばんくらいに好きなアーティストのしかも最もお気に入りの曲をカバーされると、どんなに素晴らしくてもやっぱり大抵は「でもどうしたって原曲にはかなわないな」ってことになると思うんですよ。私みたいにこだわりが強いタイプは特に。
 
ところがこのA Case Of Youは「あ、こっちもいい。下手すると原曲よりいい」って思わされた私史上稀にみる最高のカバーだったのでした。
 
それまで私がちゃんと聴いたことがあったプリンスの曲は1999とKissとPurple Rainくらいでして。
まあKissとか超変な曲じゃないですか。
最初ウァンとかいううめきで始まり、歌ったらガチファルセットで、オチが♪ティリリリリリリリリ、キィッス♡とか小粋にまとめあげる。
謎すぎる曲ですよ。 
パレード(紙ジャケ SHM-CD)

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しかもプリンスは私がプリンスを認識した当時はかつてプリンスと呼ばれていた名前のないアーティストなどと名乗り妙な記号使ってたりして意味わからんってかもはやキワモノの代表格みたいな感じでした、あくまでも私には。
そんなわけでプリンスとはしばらく距離を置いていた日々のさなか。ジョニ・ミッチェルのトリビュートアルバムが発売されたのでした。
 
大好きというかこの人がいたからこそそしてこの曲があったからこそ私は腐らずに女をやっていられるといったらさすがに大袈裟ですが、とにかくそんな誇張をしたくなるほど心動かされたA Case Of Youはさて、と輸入盤(しか売ってなかった)の小冊子をめくりました。
 
ふーん、カバーしてんのプリンスかー、テラテラした音になってんのかなー、と思いつつ再生したところ。
 
予想を完全に裏切るまさかのジャジーなしっとりサウンドが流れてきたではありませんか。
 
え、なにこれ。
ジャズじゃん?完全にジャズじゃん?
しかも超立派なジャズじゃん??
ニューヨークのコットンクラブで演奏されてそうなモノホンのジャズじゃん???*2
 
ロックとかポップスとかでいけいけだった人なのにあっさり本気のジャズ鳴らしてきよった。
 
あ、この人まじもんの天才なんだ、って7年越しくらいにようやく理解したのでした。
 
私は単にピアノが弾けるだけで特に曲作ったりとかしてないので完全に適当に述べますがね。
 
まず拍子が完全に変わっている。
きらめくピアノとベースを導入している。
カントリー風の女子の弾き語りがあたかもジャズのスタンダードナンバーに変身しちゃってます。
居心地のよい重厚なバーでウイスキー片手に聴きたいじゃんもうこれ。
何が言いたいかっていうと、曲を一回完全にバラバラにぶっ壊して作り直したようなカバーなのです。
なんというかアレですよ、脱構築*3
 
かようにしてプリンスとの距離が一気に縮まりました。
それからとりあえずベスト盤を聴きましたね。
Little Red Corvetteとかちゃんと歌っぽいのも聴いてようやく、プリンスを受け止められる耳というか感性というか、が仕上がりました。
 
要するにです。
ピカソがあんな妙な絵描いたのは西洋絵画の技法をあっさりマスターしちゃって究極の絵画とは何かを探し求めていたからだったように。
数々の音楽的素養とかなんたらをきっとあっさりマスターしちゃったからあんな妙な曲作ってたんだね!と納得するに至ったのでした。
 
変幻自在の七色のアーティスト*4
 
やっぱり早すぎる死だったと思います。
天国ではどんな音を鳴らしているのかしらね。
 

*1:※後日注: この頃ジョジョ5期を知らなかったのですが、まんまジョルノがゴールド・エクスペリエンスなのでこの下の注釈がまじでクソワロですね。自分で言ってますけど、ほんとぐぐれかすですね。

*2:大学院卒業旅行のニューヨークで調子に乗って訪れました。当時近隣都市に住んでた友人Nにさんざんつきあってもらって。Nと「超わかってるふりしようよ」「イイね」って腕ぐみして聴いてました。とはいえわかってるふりしなくてもあっさりうおお、ってなりました。本当にいいものだと素人にもよさがわかるんさね。あと両親を連れてきたらしい9歳くらいの男の子のお客さん(連れられて、ではない、彼が連れてきたのである)がステージに上げられて本気でドラム叩きだしたら止まらないしプロ並みにうまいしでお客さんじゅう大拍手だったな。いい思い出。

*3:以前書いた気がしますが、大学時代に脱構築というたら上旬の友人Nとの間でセックスしたということを指していましたっけ。青いですね恥ずかしいですね。←淀川長治調で

*4:処でジョジョのキャラとか色づかいがときどきプリンスを彷彿とさせるんですが気のせいか。どなたか何か関連情報ご存じでしたら教えてください。いやggrksですかね。

American Pie

先日のエントリーを書いた矢先。


デヴィッド・ボウイさんが亡くなられたそうです。


ボウイさんはずっとかっこよかった。
どの時代も前衛的だった。
火星人は言うに及ばず。
インターネットが普及し始めた頃に超かっこいいメンバーサイト開設したり。
ヴィクトリア&アルバート博物館の展覧会も大盛況だった。


そんでずっと美しかったなあ。


いちどは生でみたかったのに間に合わなかった。


私の10代終わりのしょうもない時期を支えてくれたスーパーヒーローでした。
なんたって浪人時代のセンター試験の思い出がジギースターダストなんだよね。
この時期ずっとそのアルバムばかり聴いていたから。
たぶんまだ結構そらで歌える。

ジギー・スターダスト

ジギー・スターダスト



そいや7年前のエントリーでも「ロックンロールの自殺者」のこと書いてましたね。
このアルバムの最終曲です。*1

(サビ冒頭)
Oh no love! you're not alone
You're watching yourself but you're too unfair

この“too unfair”というひとことにやられたんですよね。
unfairですよ。
wrongとかじゃなくて、unfair。
Weblioの例文一覧とかみてみてくださいよ。


地球に堕ちてきたスーパースター。
とうとう火星に還ったんですかね。
69歳って年齢もまさにできすぎのような気もする。


本当にありがとう、どうぞ安らかに。


きょうのタイトルは好きなアーティストが亡くなったとき必ず聴く曲です。
The day the music died.



長すぎるけど歌詞もぜひみてほしい。
どなたかのサイトから転用させていただきます*2


なおマドンナもカバーしてます。*3

*1:いやいやそこはもっとまともな有名対訳サイトの和訳を。。この曲に救われた人が多いというのはわかる気がします、ていうか私もそのひとりですね。

*2:お前が和訳しろって感じですね、そうですね、そのうち…。こちらのサイトではつかわれている言葉の背景についても詳細に書かれていてとても面白いかつ参考になります。

*3:そもそもこのカバーで知りました。渋谷陽一のラジオでドン・マクリーン版と両方ぶっつづけでかけてくれたっけ。

Merry Christmas, Mr. Lawrence

クリスマスに間に合ってない感がものすごいですが。
こないだWOWOWでクリスマスの夜にやってたのをみました。


意味がわからないのに泣けてしまう映画のシーンというのが自分にはいくつかあるのですが、
この「戦場のメリークリスマス」もそんなシーンを含んだ映画であります*1



ラストでたけし演じるハラが言い放つ、
「めりーくりすます、めりーくりすます、みすたーろーれんす」
で本当に意味がわからないんだけど、涙腺崩壊です。


あらすじとかはまあウィキペディアさんにおまかせするとして。
例によって思い入れとかを書きなぐります。


若かりし日はそりゃーデヴィッドボウイ美しい、でみてましたけど*2
大きくなってからみるとなんでしょうね、
ディスコミュニケーションの悲劇、ってのがテーマだったのかなと思います。


人種とか性別とかを超えて人間同士がわかりあおうとすると、
極限状況下ではたいてい命がけになってしまう、ってことかなと。
もしくは、人の価値観を変えようと思ったら、命を差し出すくらいの犠牲をはらうものだ、ってことかなと。
戦場が舞台なのでどうしても命がけになりますが、戦場でなくてもそうなのかも*3


最近、とある人からハナさんは戦争ものが好きなんですね、って言われて、
改めて見返したところ、たしかに戦争ものも多いなあと思ったものの、
私は結局なんというか極限状況系が好きなんだなと気づきました。
極限状況下に置かれたときに人が何を感じたりどう行動したりするか、
むきだしのやばい部分をみたがりなんだなと。
戦争系はもちろん、ホラー系が好きなのも多分そう。


でも、だれかのリアル体験をドキュメンタリーとして知るのではなくて、
擬似的に知ることができるフィクションとしてみてみたい。
たとえばコーヒーいれるかのように、
リアル体験をフィルターにかけてろ過して、
抽出された結果フィクションになった状態のものをみたい。
リアルに来てほしくはないんですよ。
来ちゃったら考える余裕なんかないし。
むしろ一目散に逃げます。


あと変な考え方だけど、リアル体験は必ずしも本質とも限らない、と思うのですよ。
リアルに付随するものをそぎ落として普遍化したものがフィクションであって、
そのそぎ落とし段階で、ものの本質がなんというか結晶化されるんじゃないかという気がしています。
例えば同じような戦争のドキュメンタリーをみて、
へえ大日本帝国軍の30代男性軍曹だとそういうふうに感じるのかー、ですませがちなところを、
フィクションにされるとなぜか自分の体験のように感じられるっていう現象ですね。
いちばん大事なところをとりだして、共感できる形に加工してみせているからなのか。
宝石の原石を磨いてきれいにするようなイメージかな。
だから加工していないリアル体験より、結晶化されたフィクションのほうが本質に感じられる、こともある。
フィクションのほうがリアルにまつわるあれこれの条件を批判とかせずに、かえって素直に受け止められる、人もいる(私とかね)。


あー夜ってやっぱ変なこと考えるもんだな。


さてキャストの話をします。
ボウイさんは完璧に美しいのでいうまでもないのですが、
この映画、キャストではなんといってもたけしが最高です。
のちに世界的監督になるのも納得。
「わたし、ふぁーてるくりすます!あっひゃひゃひゃひゃひゃ」とか。
どんだけうまいんだこの人、と改めてみると仰天しました。
私は芝居とは説得力であると思っています*4
そういう人間がそういう空間でそういう行動をとることを何の負荷もなく出現させてみせられるのがうまい役者。
演技がうまいといわれる役者は、実はその時点ですでにまずい。
だって演技しているのがばれちゃってるわけだから。
そこでいうとこの映画でのたけしはまじで天才です。
完全にハラ軍曹として存在しています。
なにせラストはたけしのどアップですからね。
監督も思わずたけしでしめちゃった的なね。
一方、クッソど素人な坂本龍一は、逆に印象に残るのでそれもいいんじゃないかと思います。
下手も下手なんですけど、それはそれでありだなと思うなんか変な良さがありますね。
ミュージシャンだのお笑いだのかき集めたイロモノキャスティングが大成功。
たけしも凄かったけど、要するに大島監督が凄かったんでしょうね。


ちなみに最初のほうの切腹シーンと後追い自殺
実際は相思相愛だったから、なんて初見当時(たぶん10代の頃)は気づきませんでした。
ていうかそもそも同性愛事件の話だってことにも気づきませんでした。
単に私が鈍かったのか?おこちゃまだったのか?

*1:他には「セントラル・ステーション」というブラジル映画のラストシーンとか、「シェルブールの雨傘」のラストシーンとか。やっぱりラストはやばいですね。意味がわからないなりに傾向としては、明らかに泣かせ的な要素はないけど、気づく人には気づくようにそっと悲しさを差し出されるのに弱いみたいです。

セントラル・ステーション [DVD]

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シェルブールの雨傘 デジタルリマスター版(2枚組) [DVD]

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*2:好きなタイプはデヴィッドボウイと公言していたあほな時代もありました。大学入学当時だったかな。友人が誕生日にボウイのLPくれましたっけ。渋谷陽一のすごく80年代っぽい解説がついてました。「○○ですネ!」とか語尾のねがカタカナでネだったりするのがなんか80年代っぽくないですかネ?!

*3:というのもですね、この間会社の研修で皆でわかりあおうみたいなのやったんですよ。そこでいろいろ前向きになれ的なメッセージがあったんですがそういうのは全く参考にならないわけですよ、はいはいあーいつもの前向きねはいはい前向きだといいですよね、って感じに心のうわっつらをすべるだけだったのですが、唯一本当に参考になったというか、心に響きまくったことがあったんですね。それは「他人は変えられない」というメッセージなのですよ。自分は変えられても、他人は変えられない。これですよ。自分の言い分で他人を説得とか、よくやりがちなんだけど、いや無理なんだよね!相手と同じ考えでない場合には!うまくやろうと思ったら、自分にとっても相手にとってもメリットになることを提供するしか説得の道はないんだよね。すごい、それだよ、そんな本当のこと教えてくれちゃうなんて感動。だから他人の価値観を変えるという、到底無理なことをねじ曲げようとするなら命がけレベルの難関というのもわからないではないです

*4:ただの映画好きが偉そうにいってますが、演劇のはじっこをちょこっとかじった経験はあるんだよ…高校時代にまさにこの映画のピアノ版をBGMにしてさ…時代劇パロディとかやってたんだよ…若かったね…異様に若かったね…