ハナビ、

ハナが東京砂漠で綴るよたばなしです copyright ©︎ ハナ 2009-2017 all rights reserved.

Closer

体力が切れて寝込んでおりました。

そんなわけで飯も食わずに一日中布団の中。
夜中にようやく腹が空かないでもない…という状況になり。
うどんをすすりながら、浪人時代にラジオにかじりついて録音したMDが擦り切れるほど毎週聴き込んだ「ワールド・ロック・ナウ」を久々に聴きました。

The Chainsmokersというグラミーだの何だの賞と実績とりまくって売れに売れているユニット(バンドではないんですよ)の今更のファーストアルバムが出るということで、渋谷陽一氏にしては珍しく、売れ線ポップなのに絶賛で紹介していました。
何故こんなにも売れたのか。
渋谷氏曰く「メロディーメーカー*1として優秀だから」これに尽きますみたいなことを仰っていました。

さて私には大学時代からOBになってもなおしつこく細く長くのおつきあいを続けさせていただいている某音楽聴きましょう大学サークルがあるのですが、そこでは年末にその年のヒット100曲を延々皆でカラオケる*2という大変素敵な企画がありまして。
なんだか正しい忘年感があって楽しいし、先輩方にも暮れの元気なご挨拶ってんで、毎年急いで一夜だか二夜漬けで5〜6曲歌えそうなやつみつくろって便乗しています。

で、昨年末はThe ChainsmokersのCloserって曲がどはまりでした。
三十路も半ばを過ぎた私の錆びかけたハートにも20代の頃の恋愛のどうしようもない青々しさ切なさみたいなのをふと感じさせてくれるような音でした。
お話にならないようなヘボい恋愛しかしてないくせにテラスハウスのごときサカリのついた青春があったかのような、それを思い出しているような錯覚をさせられます。
やまいるよね。
ファーストアルバム買っちゃうかもしれません。

https://youtu.be/PT2_F-1esPk

それで何故か、このアルバムってたしかに流行りだけど10年後もちゃんと聴けるかな、それとも古く感じるかな、なんてことを考えたりしました。
2000年代に流行ったクラブミュージックだとダフトパンクとか。
あれは当時聴いても最先端感がなかったから今でも聴くにたえるというか、古くは感じない。
一方で90年末に流行ったグランジは今聴くとああ…(´Д` )ってなるんですよ。
時代の空気とは、などと考えてたら変な散文が書けそうな気がしたので、書きます。

                  • -

ノストラダムスを知らない」

君が生まれた頃はもう携帯電話があったよね
かつてはポケベルってやつが大盛況だったんだけど
今じゃ絶滅はしてなくとも病院の時間待ちで渡されるのがせいぜいかな
女子高生が公衆電話に列を作って
凄い指使いで暗号打つみたいにメッセージを紡いだ
残念ながら私は持ってなかったけど

歴史の転換期の記憶があって
そのとき自分が何をしていたかもある程度覚えてて
そういうのが歳をとるってことなんだなと思う
自分が歴史の証人になるってことが

ロシアはソ連だったんだ
プーチンじゃなくてゴルバチョフ書記長
毎日ニュースで早口言葉みたいなその名前を聞いた

イギリスが今や離脱を決めたEUは
あの頃できたばっかりで
フランスはフラン、ドイツはマルクを使ってた
そんで1ドルは360円
シドニーウエリントン市場
ウルグアイラウンド
牛肉とオレンジ
あとカリフォルニア米
何より消費税がなかったね

日本ではバブルが崩壊したって言ってたけど
なんのことか実感はなかったな
でも山一證券が破綻したニュースはインパクトがあった
銀行はどんどん合併した

イラン・イラク戦争もあったっけ
うちのベランダにイラク兵が忍び込んで攻撃される夢をみたんだよ
戦争といえば天皇の戦争責任って言葉がまだ残ってた
夏休みの自由研究なんかでそれらしい本を読んだっけ

総理大臣はまだなりたい職業の代表格で
アイムソーリーヒゲソーリーなんてギャグも聞いた
Jリーグは発足直後
ドーハの悲劇
日本がワールドカップに当たり前に出るなんて思わなかったよ
地下鉄サリン事件が衝撃で、電車通学が少し怖かった
麻原彰晃の逮捕は生中継だった

それから9.11が映画のように起きて
世界がテロを意識しはじめた

ウインドウズとiMacが現れて
インターネットがバカみたいに広まった
パソコン通信に四角いフロッピー
今は昔だね

ポケベルがピッチに
ピッチが携帯に
携帯画面がモノクロからカラーになって
写真が撮れるようになったのが画期的
プリクラはだいぶ減ったよね

いちばん大きい事件はやっぱり東日本大震災
計画停電とポポポポーン
そのあと日本は何だか変な方向に進んでる

君の時代にいちばん大きいニュースになるのは何だろうね
私の最初のニュースの記憶は実はグリコ事件なんだ
グリコのお菓子を食べながらテレビをつけたら毒入り菓子のニュースが流れてきて
食べてたお菓子(棒付きグミキャンディだった)の袋をそっとみたらグリコって
死んじゃうのかなとぞっとしたよ
あの頃世界と自分は1:1だと思ってたから

君は2000年になる前に世界が終わるって言われてたの知らないだろう
ノストラダムスの大預言っていうのがあってね
1999年の7月になんかの大王が降りてきて世界が滅亡するっていう
まあ単なるオカルトなんだけど
でもなんだか不思議な信憑性はあったんだな

もちろん2000年を過ぎてもごらんのとおり世界は滅亡していない
だけどもし終わったらっていう気持ちを私はほんの少しどこかに持ちながら生きてた

君はどうかな
君にもノストラダムスはいる?

                  • -

えらい中途半端なのでいずれ書き直そう。
取り急ぎ。

*1:こういう用語がまさにワールドロックナウというかロッキングオン用語ですね。あと「たたずまい」とかね

*2:ラップでもおじさんからおじょうちゃんまで回らない日本人の舌で歌いまくるので動画みたらガイジンクソワロじゃないかと思うんですよね。去年のPandaのラップとかまじでジャスティンビーバーが俺のフェイバリットってつぶやきそうな勢い。自分の曲のカラオケよりも。まあ公開しないけど

Like a Rolling Stone

ボブ・ディラン氏が受賞するする詐欺で結局受賞したけど先約で受賞式ばっくれとかいう新たな芸風で世間をにぎわせているノーベル文学賞です。

ちょっとした事情で彼の代表作であるLike a Rolling Stoneを和訳することになりました。
せっかくなので載せておきます。

[ハジマリ]

Like a Rolling Stone

Song by Bob Dylan
Lyrics from Google Play Music
Translation by ハナ ©︎ 2016 all right reserved.

Once upon a time you dressed so fine

Threw the bums a dime in your prime, didn't you?

People call say 'beware doll, you're bound to fall'

You thought they were all kidding you

You used to laugh about

Everybody that was hanging out

Now you don't talk so loud

Now you don't seem so proud

About having to be scrounging your next meal

かつてはぴかぴかにめかしこんで
乞食に小銭を投げてやったじゃないか
あんたの全盛期にさ
口々に言われたな
気を付けろよマネキンさん
今に転落しちまうぞ
みんなからかってるんだと思ってた
うろついてるやつらを笑ってた
今は大きな声じゃ話さない
今は自信満々にゃ見えやしない
明日の食いもんをたからなきゃいけないんだから

How does it feel, how does it feel?

To be without a home

Like a complete unknown, like a rolling stone

どんな気分だい
どんな気がするかい
宿なしになるってことは
名なしの誰かになるってことは
転げ落ちる石のように

Ahh you've gone to the finest schools, alright Miss Lonely

But you know you only used to get juiced in it

Nobody's ever taught you how to live out on the street

And now you're gonna have to get used to it

You say you never compromise

With the mystery tramp, but now you realize

He's not selling any alibis

As you stare into the vacuum of his eyes

And say do you want to make a deal?

とびきりぴかぴかの学校に行ってたって
いいじゃないかミス孤独さん
でもただラリってただけだよな
路上で生きてくすべなんて
誰も教えちゃくれなかった
でも今は慣れなきゃいけない
怪しげな浮浪者なんかとじゃ手を打たないって言ってたが
今や思い知ったんだ
あいつがアリバイを売っちゃいないことを
あいつの空っぽの目を見つめて
あたしとやりたいかい?って聞いたときに

How does it feel, how does it feel?

To be on your own, with no direction home

A complete unknown, like a rolling stone

どんな気分だい
どんな気がするかい
天涯孤独になるってことは
帰る家なんかないってことは
まったく誰にも知られない
転げ落ちる石のように

Ah you never turned around to see the frowns

On the jugglers and the clowns when they all did tricks for you

You never understood that it ain't no good

You shouldn't let other people get your kicks for you

You used to ride on a chrome horse with your diplomat

Who carried on his shoulder a Siamese cat

Ain't it hard when you discovered that

He really wasn't where it's at

After he took from you everything he could steal

ジャグラーやピエロがあんたのために芸をしたとき
決して振り返らず決して彼らのしかめ面を見なかった
見なけりゃ大丈夫って思ってたが無駄なこった
自分を良くみせるために他人を蹴落とすべきじゃない
昔はシャム猫を肩にのっけたあんたの元締めと
ピカピカのメッキをしたお馬さんに乗ってたもんだ
辛かったろう、あいつが本当はひとかどの人物なんかじゃないって気づいたときは
あんたからむしりとれるもの全部持ってっちまった後で

How does it feel, how does it feel?

To have on your own, with no direction home

Like a complete unknown, like a rolling stone

どんな気分だい
どんな気がするかい
身一つで生きるってことは
家路なんかみつからないってことは
転げ落ちる石のように

Ahh princess on a steeple and all the pretty people

They're all drinking, thinking that they've got it made

Exchanging all precious gifts

But you better take your diamond ring, you better pawn it babe

You used to be so amused

At Napoleon in rags and the language that he used

Go to him he calls you, you can't refuse

When you ain't got nothing, you got nothing to lose

You're invisible now, you've got no secrets to conceal

見ろよ教会の塔のてっぺんにいるお姫様やら着飾った人々
あいつらみんな酔っ払って
自分はうまくやったと思ってる
高価なプレゼントを交換し合ってる
でもそのダイヤのリングはとっといた方がいいぜ
そいつを質に入れてこいよ
前にボロを着たナポレオンをずいぶん面白がってたな
奴がコールしてきたらあんた断れないぜ
何にも手に入らねえときはな
何にも失うものがねえときはな
あんたはいまや透明人間、隠すような秘密なんかどこにもない

How does it feel, ah how does it feel?

To be on your own, with no direction home

Like a complete unknown, like a rolling stone

どんな気分だい
ほらどんな気がするかい
天涯孤独になるってことは
帰る家なんかないってことは
まったく誰にも知られない
転げ落ちる石みたいに生きてくってことは

[オワリ]

訳してみてはじめてこんな曲だったんだってわかりました。

落ちぶれた売春婦になってしまったかつての高級コールガール*1をおちょくる歌なんですね。

たぶんこの時代のイケイケムードでガンガン路線だったアメリカへの皮肉だったりするのかなと推察します。
冷戦、キューバ危機*2ケネディ暗殺、ベトナム戦争
戦争という悪どい手段で富を得るアメリカの、その虚飾がはがれた後に残るものはただの貧困と孤独である、アメリカはやがて病むという"ぼんやりとした*3"予感のようなもの。
それをこういう比喩で歌にして、さらにアコギをエレキギターに持ちかえて高らかに響かせた。
ローリングストーン誌の歴史に残るロックの名曲500リストのトップに来るのも納得。
ノーベル文学賞もんの音楽革命ですね。

ただライナーノーツを読むとディランはいつも単になんとなく作っただけだし、とにかく自分の作品を分析するような風潮はアホじゃねえかと公言していたそうなので、つまりはノーベル文学賞についてもアホじゃねえかと思っているからあの態度なんでしょうね。
講演?なにそれ。やってられるかくだらねえ、的な。

所詮私のつたない英語力とあふれる妄想力によるものなので、一部意訳しすぎたり誤訳だったりしているかもしれません(特にコールガールのあたり。どこのサイトあたっても上流階級の娘とされているので)。
詳しい方がいらっしゃればご一報くだされば幸いです。

トレイシー・チャップマンのFast Carとルー・リードのPerfect Dayも同じタイミングで和訳したのでいずれそれらも載せます。

万が一これを見たら同僚にアカウントがバレそうですが。
こっちにはまともなことしか書いていないですし、どうせこんな人間であることがばれかけているので構いません。

ちなみにちなみに。日本語のライナーの歌詞間違ってますね。
冒頭、dressed so fineのはずがso findになってました。

*1:3節目を意訳。your diplomat=シャム猫を肩に乗っけたあんたの外交官≒コールガール組織の元締めと考えました。あと大道芸人見世物小屋の連中とは違うって示したくて?ジンクスかなにかで?奴らを見ないようにしていたというくだりでも、本質的には彼らと同類ってことなんだなと感じたため

*2:昨年キューバに旅行するにあたって歴史をちょっと調べたらケネディが極悪非道にみえましたよ…私の大好きなルー・リードの歌には「ケネディが死んだ日」って曲あるからきっとリベラルで素晴らしい政治家だったんだろうなと言うイメージだったのですが…片方の面からしかものを見ない弊害ってまじ怖いですね

*3:もちろん芥川龍之介の遺書からの引用です。自殺の理由を「ぼんやりした不安」って表現するなんて格別ですね。さすが天才。それにひきかえ三島由紀夫は遺書も辞世の句もくどかったし自殺の方法もアレだしうーん。ファンが多いのも評価が高いのも三島由紀夫で、それこそノーベル文学賞を貰いそこねた人物ではありますが。かわりに彼の師匠の川端康成が受賞したというのは一部で有名な話。ちなみに川端氏の講演タイトルは「美しい日本の私」ですが、数十年後に大江健三郎氏が受賞したときそれをもじって「あいまいな日本の私」ってしたのすげえユーモアあってすげえクソワロと思います。まあつまり、ぼんやりとした、とか、あいまいな、ってのがいかにも日本らしいんじゃないかなと私はさらに思います

Spotlight

かように音楽のことばかり綴っておりますが、実を申せばグラミー賞よりアカデミー賞派です。

確実と言われた作品がまさかの番狂わせで獲れないとか*1
ディカプリオさん今年も主演男優賞獲れないとか
誰が失言で炎上するかとか
昔ハードボイルドで鳴らしたイケメンでも鬼畜おじいちゃんが何歳まで賞獲りレース続けるのかとか*2
映画評論家の町山智浩さん予想がどんだけ当たるかとか

オスカーにはそういう楽しみ方があるんですよ!

いや、あったんですよ…

ディカプリオさん今年遂に受賞しちゃいましたね…
彼の映画界での立ち位置を象徴するような地獄の淵からこんにちは映画で…
アイル、ビー、バーック*3ってかアイヴ、ビーン、バーーーーーーック!!!!!
ですよ…

3度目ならぬ6度目の正直。
通常の正直の2倍かかってますね、相当な真っ正直ですね。
なんせ一回引退までしたのに復帰して賞さらいにきましたから。
ここで受賞しなかったら町山さん曰く「怖い」「もう何をされるかわからない」ほどになっていたわけですよ*4

アカデミー会員様はスターがお嫌いらしいです。
日本で人気のハリウッドスター様。
ブラピ様、ジョニデ様、そしてあのトム・サイエントロジー・クルーズ様。
みいーーーーーんなオスカーの主演男優賞には*5ご縁がございません!
(全員ノミネートはされてる、それが余計気の毒)

余談ですが私はアルゴ以来ベンアフ好きなのですが、彼は数年前アルゴで監督として作品賞獲ってますが監督賞は獲れなかった、どころかノミネートもされなかったんですよ。
JLoさんといちゃつきすぎて干される等の辛酸なめてますから。
その結果、史上稀にみるオスカーノミネートなしの全米監督協会賞受賞者になってました。*6
選考委員ってか風紀委員じゃねーかヲイ。

アカデミー賞の選考委員って?
http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000115871

町山さんが語るアカデミー賞とディカプリオ
http://machiokoshi666.blog.fc2.com/blog-entry-50.html

町山さんによる今回の振り返り(クソワロ)
http://miyearnzzlabo.com/archives/36341

その名のとおりガチのアカデミック。
つまりは保守系老害政治家のような(失礼)。
もしくは「あーらハナさんったら少し煮物のお味が濃いようじゃございません、最近の若い人は何ですのほら、化学調味料とかお使いになるようですし、あたくしどもの時代にはコンブにかつぶしにシイタケしかなかったもんでございますからね、いやあねえ年よりは味覚が古くってごめんなさいね」とかいう嫁いびりお姑さんのような(これまた失礼)。

はあはあ。日暮れて本題遠し。

要するに何が言いたかったかっていいますとね。
そんな文字通りのアカデミック老害が選んだ去年いちばん面白かったアメリカ映画=アカデミー作品賞が、本日のタイトルの「スポットライト 世紀のスクープ」なんですよ!

だけどゴールデンウィークが10連休になったもんだからさすがにレジャーらしいことしたくってとりあえず映画でもみようかってなってたぶん10年ぶりくらいにわざわざ映画館にみにいったんですよ!
もうこないだ映画館でみたのなんていつだったか覚えてないよ!*7

かように今までディカプリオさんで盛り上がってきたのに何で受賞作のレヴェナントじゃなくてこっちにしたかってそれはね、ディカプリオ映画が3時間近くもあるからなんですよ!!!
長いよ!!!!!*8

という消極的な理由でみたにもかかわらず。
2時間が40分くらいにしか感じられないほど夢中になってしまった。
保守老害(超失礼)の太鼓判だろうが何だろうが。
本当に素晴らしい映画でした。

****

スポットライト 世紀のスクープ
http://spotlight-scoop.com

さっくりなあらすじを述べますと。
かなり忠実に実話に基づいた映画だそうです。

ボストンが舞台。
2001年にゲーガンという神父が少年を性的に虐待した罪で訴えられていたが、裁判の結果、示談になったという事件が地元紙ボストン・グローブの小さな記事になった。
その神父は過去にも同様の性的虐待で訴えられていた。
記事は、示談にしたらまた同じことが起きるだろう、と締めくくられていた。
そこへマイアミから来た新しい編集局長が着任。
この事件を掘り下げて取材するよう指示する。
カトリック教会絡みの案件には触れないのが地元では暗黙の了解だったが、よその土地から来たユダヤ系の新編集局長にはそんな縛りはなかった。
“スポットライト”と呼ばれる特集欄を担当するチームの5人が調査を始める。
やがてその神父に限らず、他の神父も含めた何百件にものぼる性的虐待と教会ぐるみの隠蔽工作が明らかになる。

神父らは、
貧困家庭で、
父親がいない、
内省的な子を、
選んで餌食にしていた。

訴えられるリスクが小さく、たとえ訴えられても立場が弱いために金で解決できる家庭の子どもを選んで虐待していた。

文字通りの聖職者がこの上なく卑劣な人権侵害を組織ぐるみで行っていた。
そして同じ地域の人間は地元では絶対的な信頼と権力を持つ教会内部にメスを入れることは決してなかった。

記者らは地道な聞き込みや気の遠くなるような調査や内部への探りや圧力との駆け引きや自身の葛藤や9.11に配慮した公開の遅延やとにかくいろんなものに長期間にわたって取り組み続け、確たる証拠を集めて、記事にする。

記事が刷り上がった日曜の朝の編集局がラストシーン。

****

いや本当にすごい話でした。
神父の罪を暴くのではなく、システムを糾弾して改善することが記事の目的で、それを成し遂げた。
事実であるからこそ感動もひとしおでした。

まずボストンがこれほど保守的な都市だとは思いませんでした。
先進的な学園都市ってイメージでしたから。

過去の裁判の証拠書類である公開資料が裁判所内部であっさり紛失してるんですよ。
ガチ隠蔽です。

学校にも神父がいて、部活まで受け持っていたりするとか…でもこれはカトリック系の私学校には普通のことなのかな?
しかしそこでも虐待起きてます。

この種の人権侵害は、ありとあらゆる集団内で発生するし、弱い立場の者が狙われるし、権力によって隠蔽させられたり羞恥心から自分で隠蔽してしまうことが多々あるのは知っています。

それが教会によって行われた場合、それが信仰を脅かす二重苦になると被害者が語っていました。

だから被害者は皆「生き残った者(survivor)たちなんだ」と。

この驚愕ばかりの映画中で、私がいちばん驚いたのは、そのように死ぬほどの苦しみを受けてもなお「でも信仰は別なんだ」と語った、別の被害者の言葉でした。

子どもが自殺するほどの精神的苦痛を受けながらも捨てなかった信仰とは何なのか、その強さはどこから来るのか。

結婚式でクリスチャンになって葬式で仏教徒になる大半の日本人(含む私)には、信仰とはどんなものか正直理解しがたいです。

発想の転換とか、周囲の愛情とか、自分への自信とか、未来への希望とか、もしたら皮肉にも信仰そのものが、被害者を生き残らせたのかもしれない。

妻も子どももいるんだ、メモはいいが実名はやめてくれ、と取材の冒頭で嫌がっていた彼が、取材が終わって去り際に、名前を出してもいいよ、とそっとつぶやいたのも印象的でした。

最後に。

スポットライトというのは実際の特集欄の名前なんでしょうが、ラストで明らかになったチームのデスクにまつわる事実とそれに対して編集長が述べた「光が当たるまでは…」というひと言。
脚本賞受賞もなるほどと思う素晴らしい台詞でした。

私もこのような組織ぐるみの隠蔽や人権侵害を、無意識どころか意図的にも見過ごすことがあることはよく自覚しておきたいと思います。
その上で個人ではなくシステムを改めるよう動きたいものだなと感じます。

派手な演出も斬新な特殊効果も素敵な音楽も使わずスター俳優さえ起用しない。
でもきっちり作品賞と脚本賞。
納得です。

あ、あと撮影監督が日本人です。
マサノブ・タカヤナギさん。
世界にひとつのプレイブック*9撮ってる!たしかにあのすっきりきれいにみせる光の感じ。すごいなあ。

町山さん解説もありました
http://miyearnzzlabo.com/archives/31555

やっぱ映画は映画館でみないとね。
お茶飲んだりスマホいじったり関連事項ぐぐったりせず映画そのものに没頭できるからね。
トイレを気にせずビール飲みながら人を駄目にするソファにおさまってみる名作も止められないけど笑

いやー、映画って、本当にいいもんですね!
水野晴郎の名言より)



処でちょっとしぼむ後日談。
この新聞社購読者減少により売却されてますね…
だからラストのクレジットにレッドソックスの名前があったのか…
世の中難しいね…
http://www.afpbb.com/articles/-/2959764?act=all

*1:主にブロークバック・マウンテンの悲劇を指す。作品賞のプレゼンターだった大大大好きなジャック・ニコルソン様がついwhat happened?って言っちゃった案件です

*2:やだおじいちゃんったらまだ殺る気… http://eiga.com/news/20160317/16/

*3:カリフォルニア州知事

*4:ディカプリオさんの実力からして獲れないのは圧倒的におかしいです。他の方々もそらおいしくいただける高級フレンチ級のお芝居ですがディカプリオさんは宮廷料理ばりのフルコースにまで仕上げてきます。どんだけ基礎が違うかは若き日のジョニデと共演してたギルバート・グレイプでもみるよろし。下手に昔お顔が可愛かったもんだからタイタニックなんかに出てアイドル扱いされちゃってかつ本人も調子乗ってましたが俳優としてのキャリアを鑑みると逆に可愛かったお顔が邪魔しちゃった感ありますよね。あ、ちなみに私タイタニックみてません。

*5:ブラピ様はそれでも夜は明けるの製作で作品賞獲ってますね。ベンジャミン・バトンは素晴らしい挑戦でしたが相手が悪かったですね。ショーンペンがハーヴェイ・ミルクじゃ勝てないよー。あとブラピ様はやっぱり嫁がすごいですね。

*6:これな。 http://m.elle.co.jp/culture/celebgossip/Ben-Affleck-Wins-Directors-Guild-Award-for-Argo-I-m-on-My-Way-13_0205

*7:こないだ彼氏がいたのいつだったか覚えてないのと一緒だよ!だってほら映画館行かなくてもTSUTAYAとかWOWOWとかHuluとかで好きな映画もおまけにドラマもみられるじゃん≒彼氏いなくてもほら…うん…言わぬがハナ

*8:まあでもやっぱみにいこうと思いますよ一応。なんかほら、熊に襲われるとこみたいし

*9:超余談ですがこのタイトルをプレイブックじゃなくてプレイバックだと間違えてましたね〜。ジェニファーローレンスの仏頂面が光ってました。人格障害すれすれのShall we ダンス。いい映画です。あとデニーロの無駄遣い具合がすごくてもはや津川雅彦w

Purple Rain

ボウイさんに続き。先日プリンスが亡くなりましたね。

ずっと前のブログでプリンスがカバーしたジョニ・ミッチェルのA Case Of Youに触れていたので少しだけ哀悼をこめてコメントしてみる。

自分のいちばんくらいに好きなアーティストのしかも最もお気に入りの曲をカバーされると、どんなに素晴らしくてもやっぱり大抵は「でもどうしたって原曲にはかなわないな」ってことになると思うんですよ。私みたいにこだわりが強いタイプは特に。

ところがこのA Case Of Youは「あ、こっちもいい。下手すると原曲よりいい」って思わされた私史上稀にみる最高のカバーだったのでした。

それまで私がちゃんと聴いたことがあったプリンスの曲は1999とKissとPurple Rainくらいでして。
まあKissとか超変な曲じゃないですか。
最初ウァンとかいううめきで始まり、歌ったらガチファルセットで、オチが♪ティリリリリリリリリ、キィッス♡とか小粋にまとめあげる。
謎すぎる曲ですよ。

しかもプリンスは私がプリンスを認識した当時はかつてプリンスと呼ばれていた名前のないアーティストなどと名乗り妙な記号使ってたりして意味わからんってかもはやキワモノの代表格みたいな感じでした、あくまでも私には。

そんなわけでプリンスとはしばらく距離を置いていた日々のさなか。ジョニ・ミッチェルのトリビュートアルバムが発売されたのでした。

大好きというかこの人がいたからこそそしてこの曲があったからこそ私は腐らずに女をやっていられるといったらさすがに大袈裟ですが、とにかくそんな誇張をしたくなるほど心動かされたA Case Of Youはさて、と輸入盤(しか売ってなかった)の小冊子をめくりました。

ふーん、カバーしてんのプリンスかー、テラテラした音になってんのかなー、と思いつつ再生したところ。

予想を完全に裏切るまさかのジャジーなしっとりサウンドが流れてきたではありませんか。

え、なにこれ。
ジャズじゃん?完全にジャズじゃん?
しかも超立派なジャズじゃん??
ニューヨークのコットンクラブで演奏されてそうなモノホンのジャズじゃん???*1

ロックとかポップスとかでいけいけだった人なのにあっさり本気のジャズ鳴らしてきよった。

あ、この人まじもんの天才なんだ、って7年越しくらいにようやく理解したのでした。

私は単にピアノが弾けるだけで特に曲作ったりとかしてないので完全に適当に述べますがね。

まず拍子が完全に変わっている。
きらめくピアノとベースを導入している。
カントリー風の女子の弾き語りがあたかもジャズのスタンダードナンバーに変身しちゃってます。
居心地のよい重厚なバーでウイスキー片手に聴きたいじゃんもうこれ。
何が言いたいかっていうと、曲を一回完全にバラバラにぶっ壊して作り直したようなカバーなのです。
なんというかアレですよ、脱構築*2

かようにしてプリンスとの距離が一気に縮まりました。
それからとりあえずベスト盤を聴きましたね。
Little Red Corvetteとかちゃんと歌っぽいのも聴いてようやく、プリンスを受け止められる耳というか感性というか、が仕上がりました。

要するにです。
ピカソがあんな妙な絵描いたのは西洋絵画の技法をあっさりマスターしちゃって究極の絵画とは何かを探し求めていたからだったように。
数々の音楽的素養とかなんたらをきっとあっさりマスターしちゃったからあんな妙な曲作ってたんだね!と納得するに至ったのでした。

変幻自在の七色のアーティスト*3

やっぱり早すぎる死だったと思います。
天国ではどんな音を鳴らしているのかしらね。

*1:大学院卒業旅行のニューヨークで調子に乗って訪れました。当時近隣都市に住んでた友人Nにさんざんつきあってもらって。Nと「超わかってるふりしようよ」「イイね」って腕ぐみして聴いてました。とはいえわかってるふりしなくてもあっさりうおお、ってなりました。本当にいいものだと素人にもよさがわかるんさね。あと両親を連れてきたらしい9歳くらいの男の子のお客さん(連れられて、ではない、彼が連れてきたのである)がステージに上げられて本気でドラム叩きだしたら止まらないしプロ並みにうまいしでお客さんじゅう大拍手だったな。いい思い出。

*2:以前書いた気がしますが、大学時代に脱構築というたら上旬の友人Nとの間でセックスしたということを指していましたっけ。青いですね恥ずかしいですね。←淀川長治調で

*3:処でジョジョのキャラとか色づかいがときどきプリンスを彷彿とさせるんですが気のせいか。どなたか何か関連情報ご存じでしたら教えてください。いやggrksですかね。

American Pie

先日のエントリーを書いた矢先。


デヴィッド・ボウイさんが亡くなられたそうです。


ボウイさんはずっとかっこよかった。
どの時代も前衛的だった。
火星人は言うに及ばず。
インターネットが普及し始めた頃に超かっこいいメンバーサイト開設したり。
ヴィクトリア&アルバート博物館の展覧会も大盛況だった。


そんでずっと美しかったなあ。


いちどは生でみたかったのに間に合わなかった。


私の10代終わりのしょうもない時期を支えてくれたスーパーヒーローでした。
なんたって浪人時代のセンター試験の思い出がジギースターダストなんだよね。
この時期ずっとそのアルバムばかり聴いていたから。
たぶんまだ結構そらで歌える。

ジギー・スターダスト  <FOREVER YOUNG CAMPAIGN 2015>対象商品

ジギー・スターダスト 対象商品



そいや7年前のエントリーでも「ロックンロールの自殺者」のこと書いてましたね。
このアルバムの最終曲です。*1

(サビ冒頭)
Oh no love! you're not alone
You're watching yourself but you're too unfair

この“too unfair”というひとことにやられたんですよね。
unfairですよ。
wrongとかじゃなくて、unfair。
Weblioの例文一覧とかみてみてくださいよ。


地球に堕ちてきたスーパースター。
とうとう火星に還ったんですかね。
69歳って年齢もまさにできすぎのような気もする。


本当にありがとう、どうぞ安らかに。


きょうのタイトルは好きなアーティストが亡くなったとき必ず聴く曲です。
The day the music died.





長すぎるけど歌詞もぜひみてほしい。
どなたかのサイトから転用させていただきます*2


なおマドンナもカバーしてます。*3

*1:いやいやそこはもっとまともな有名対訳サイトの和訳を。。この曲に救われた人が多いというのはわかる気がします、ていうか私もそのひとりですね。

*2:お前が和訳しろって感じですね、そうですね、そのうち…。こちらのサイトではつかわれている言葉の背景についても詳細に書かれていてとても面白いかつ参考になります。

*3:そもそもこのカバーで知りました。渋谷陽一のラジオでドン・マクリーン版と両方ぶっつづけでかけてくれたっけ。

Merry Christmas, Mr. Lawrence

クリスマスに間に合ってない感がものすごいですが。
こないだWOWOWでクリスマスの夜にやってたのをみました。


意味がわからないのに泣けてしまう映画のシーンというのが自分にはいくつかあるのですが、
この「戦場のメリークリスマス」もそんなシーンを含んだ映画であります*1



ラストでたけし演じるハラが言い放つ、
「めりーくりすます、めりーくりすます、みすたーろーれんす」
で本当に意味がわからないんだけど、涙腺崩壊です。


あらすじとかはまあウィキペディアさんにおまかせするとして。
例によって思い入れとかを書きなぐります。


若かりし日はそりゃーデヴィッドボウイ美しい、でみてましたけど*2
大きくなってからみるとなんでしょうね、
ディスコミュニケーションの悲劇、ってのがテーマだったのかなと思います。


人種とか性別とかを超えて人間同士がわかりあおうとすると、
極限状況下ではたいてい命がけになってしまう、ってことかなと。
もしくは、人の価値観を変えようと思ったら、命を差し出すくらいの犠牲をはらうものだ、ってことかなと。
戦場が舞台なのでどうしても命がけになりますが、戦場でなくてもそうなのかも*3


最近、とある人からハナさんは戦争ものが好きなんですね、って言われて、
改めて見返したところ、たしかに戦争ものも多いなあと思ったものの、
私は結局なんというか極限状況系が好きなんだなと気づきました。
極限状況下に置かれたときに人が何を感じたりどう行動したりするか、
むきだしのやばい部分をみたがりなんだなと。
戦争系はもちろん、ホラー系が好きなのも多分そう。


でも、だれかのリアル体験をドキュメンタリーとして知るのではなくて、
擬似的に知ることができるフィクションとしてみてみたい。
たとえばコーヒーいれるかのように、
リアル体験をフィルターにかけてろ過して、
抽出された結果フィクションになった状態のものをみたい。
リアルに来てほしくはないんですよ。
来ちゃったら考える余裕なんかないし。
むしろ一目散に逃げます。


あと変な考え方だけど、リアル体験は必ずしも本質とも限らない、と思うのですよ。
リアルに付随するものをそぎ落として普遍化したものがフィクションであって、
そのそぎ落とし段階で、ものの本質がなんというか結晶化されるんじゃないかという気がしています。
例えば同じような戦争のドキュメンタリーをみて、
へえ大日本帝国軍の30代男性軍曹だとそういうふうに感じるのかー、ですませがちなところを、
フィクションにされるとなぜか自分の体験のように感じられるっていう現象ですね。
いちばん大事なところをとりだして、共感できる形に加工してみせているからなのか。
宝石の原石を磨いてきれいにするようなイメージかな。
だから加工していないリアル体験より、結晶化されたフィクションのほうが本質に感じられる、こともある。
フィクションのほうがリアルにまつわるあれこれの条件を批判とかせずに、かえって素直に受け止められる、人もいる(私とかね)。


あー夜ってやっぱ変なこと考えるもんだな。


さてキャストの話をします。
ボウイさんは完璧に美しいのでいうまでもないのですが、
この映画、キャストではなんといってもたけしが最高です。
のちに世界的監督になるのも納得。
「わたし、ふぁーてるくりすます!あっひゃひゃひゃひゃひゃ」とか。
どんだけうまいんだこの人、と改めてみると仰天しました。
私は芝居とは説得力であると思っています*4
そういう人間がそういう空間でそういう行動をとることを何の負荷もなく出現させてみせられるのがうまい役者。
演技がうまいといわれる役者は、実はその時点ですでにまずい。
だって演技しているのがばれちゃってるわけだから。
そこでいうとこの映画でのたけしはまじで天才です。
完全にハラ軍曹として存在しています。
なにせラストはたけしのどアップですからね。
監督も思わずたけしでしめちゃった的なね。
一方、クッソど素人な坂本龍一は、逆に印象に残るのでそれもいいんじゃないかと思います。
下手も下手なんですけど、それはそれでありだなと思うなんか変な良さがありますね。
ミュージシャンだのお笑いだのかき集めたイロモノキャスティングが大成功。
たけしも凄かったけど、要するに大島監督が凄かったんでしょうね。


ちなみに最初のほうの切腹シーンと後追い自殺
実際は相思相愛だったから、なんて初見当時(たぶん10代の頃)は気づきませんでした。
ていうかそもそも同性愛事件の話だってことにも気づきませんでした。
単に私が鈍かったのか?おこちゃまだったのか?

*1:他には「セントラル・ステーション」というブラジル映画のラストシーンとか、「シェルブールの雨傘」のラストシーンとか。やっぱりラストはやばいですね。意味がわからないなりに傾向としては、明らかに泣かせ的な要素はないけど、気づく人には気づくようにそっと悲しさを差し出されるのに弱いみたいです。

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*2:好きなタイプはデヴィッドボウイと公言していたあほな時代もありました。大学入学当時だったかな。友人が誕生日にボウイのLPくれましたっけ。渋谷陽一のすごく80年代っぽい解説がついてました。「○○ですネ!」とか語尾のねがカタカナでネだったりするのがなんか80年代っぽくないですかネ?!

*3:というのもですね、この間会社の研修で皆でわかりあおうみたいなのやったんですよ。そこでいろいろ前向きになれ的なメッセージがあったんですがそういうのは全く参考にならないわけですよ、はいはいあーいつもの前向きねはいはい前向きだといいですよね、って感じに心のうわっつらをすべるだけだったのですが、唯一本当に参考になったというか、心に響きまくったことがあったんですね。それは「他人は変えられない」というメッセージなのですよ。自分は変えられても、他人は変えられない。これですよ。自分の言い分で他人を説得とか、よくやりがちなんだけど、いや無理なんだよね!相手と同じ考えでない場合には!うまくやろうと思ったら、自分にとっても相手にとってもメリットになることを提供するしか説得の道はないんだよね。すごい、それだよ、そんな本当のこと教えてくれちゃうなんて感動。だから他人の価値観を変えるという、到底無理なことをねじ曲げようとするなら命がけレベルの難関というのもわからないではないです

*4:ただの映画好きが偉そうにいってますが、演劇のはじっこをちょこっとかじった経験はあるんだよ…高校時代にまさにこの映画のピアノ版をBGMにしてさ…時代劇パロディとかやってたんだよ…若かったね…異様に若かったね…

Dieu est un fumeur de havanes

葉巻のことを書こうと思う。こないだ葉巻を初体験したので。


吸った葉巻はまじりけなしのキューバ産。
シルバーウイークキューバに旅行して、首都ハバナの専門店で買った。
ちゃんとした本物の手巻きシガー。


旅行は代理店主催のツアーにのっかって行った。ごはんもついてる楽ちんなやつね。
本当はフリープランのある個人旅行がよかったんだけど、なにせチケットが取れなかったし、逆に値段も高かった。


15人の日本人観光客とガイドさん1人から成るご一行様が、現地人のイケメンガイド氏に、まとめてぞろぞろとお店に誘導された。
ガイドブックにも載っているいわゆる有名店である。
薄暗い店内の、濃い色の木材で造られたカウンターの上に、アソート的なものをあれこれ並べてもらって、押し合いへしあいしながら選んだ。
(これはほかのお店でもそうなんだけど、キューバの店はラム酒博物館とかもなぜか一様に店内が暗かった印象がある)


私は太めのやつ5本入りと少し細めのやつ6本入りの2種類を選んで買った。
ツアー客の少々スカした感じの中年男性に「そんなに太いの買うの?マフィアじゃないんだから」とディスられたが。
太い方がむしろ吸いやすいらしいと事前に調べておいたので。
ちなみに同行の友人(9歳下)は「あの人ツアー客の中で一番嫌い」と言っていた。


キューバでは時間の感覚が圧倒的に違った。
アメリカに経済制裁を受け続けていた国である、つい最近国交回復してニュースになったけど。
そのため、生活用品にしろ建築資材にしろ、新しいものが入ってくるルートが限られている。
そのうえ共産主義国だから、政府が国内の経済を統制していて、普通の国民はさらに持てる資産が限られている。
だからもともと持っていた古いものを何とか維持して、状態をつなぎとめて暮らしている。
ハバナの旧市街は、スペインの植民地時代の建物がそのまま使われて、それが文化資産になっている。
名物のクラシックカーも、古いものを何とか使おうという工夫の結果である。
ちなみに最近になってやっと自営業の許可がでたらしい。クラシックカーでタクシー営業する人が増えたのもその影響だとか。
そんで飲食店やらタクシー運転手やらの自営業はキューバ国民的には勝ち組らしい。
一般家庭には未だに雨水を貯めるタンクがあって、生活用水として使っているときいて仰天した。


街の様子をひとことでいえば「退廃的」という表現になるものの、だめになる悲壮感みたいなものはない。
配給(!)や医療なんかの保障がしっかりしていて、貧乏で働けないことがイコール死にはならない。
つまり危機感がないからだと思う。
しかしまあ教科書にもあるように、共産主義の失敗の一因は、そんな危機感のなさに付随する労働意欲の欠如であり。
昼間からぷらぷらしているおっさんとか結構いた。
金持ちは税金ふんだくられるばかりだから逃げたくなりそうだし。
実際逃げるらしい、マイアミあたりに。ゴムボートで(!)


時間の感覚が違ったのはもちろん、こちらにも原因があって。
バカンスで、日本でのがさがさした繁忙を離れているからとか。
何よりネットがつなげないから気持ちにゆとりがあったんだと思う。
メールもツイッターも気にすることなかった*1
ただ歩いて、ときどきシャッターチャンスに真剣になるくらいでよかった。
そもそも旅行の醍醐味って、名所旧跡をスタンプラリーみたいに追っかけることじゃないよね。
違う風景を楽しんだり、違う気候の違う空気を吸ったり、違うものを食べてだらだらしたり、とかそういうことにあるのだ、少なくとも私の場合。
スタンプラリーする奴らのことは「観光貧乏性」と勝手に命名している。


旅行先がなぜキューバだったのかというとアメリカとの国交回復のニュースがあったから。
実際にはそうなりそうというタイミングで申し込んで、回復前に間に合うかと思っていたのだが。
意外に動きが早く、行く直前に回復してしまって、シルバーウイークには既にアメリカ大使館が設置されていた。
アメリカという国は近代になってからはまじで世界の諸悪の根源だとずっと思っている。
理由はわんさかありすぎていちいち並べるのが面倒なので、身近な点を端的にいえば未だにやつらが日本を牛耳っているのが嫌である。
だからアメリカに負けていない国にはいいぞもっとやれとわくわくする。
小国ではベトナムが代表格だが、経済封鎖されたキューバもそうである。


ちなみに私の知っているベトナム戦争はといえば。
枯れ葉剤でシャム双生児としてうまれたベトちゃんドクちゃん*2と、映画「フルメタルジャケット」である。
フルメタルジャケット」はかなりお気に入りの映画で、つい最近ブルーレイをつい買って見返してしまったほどである*3
お気に入りの箇所を特に疲れたときやへこんだときに思い出すと元気になれるのである*4
「サーイエッサー!(Sir, yes, sir!)」とかはもちろん。
ほほえみデブの*5「セブンスィックストゥー、ミリメター、フゥメタール…ジャケーッ(7.62 millimeter, Full metal jacket)」とか。
ハートマン軍曹の「人種差別は許さん、黒豚、ユダ豚、イタ豚を、俺は見下さん。全て、平等に価値がない!」とか。
同じくハートマン軍曹の世界最強に下品な歌「母ちゃん父ちゃんベッドイン♪(Mama and Papa were laying in the bed)」とか。
キチガイ兵士*6の「逃げるやつはベトコンだ、逃げないやつはよく訓練されたベトコンだ」「(よく女子供が殺せるなという主人公の言葉に反応して)簡単だ、動きがのろいからな!」とか。
パロられるために生まれたとしか思えないくらい、とにかく名セリフ名シーンのオンパレード。
しかし酷い戦場をありのままに映画にしたかった(反戦という意味すらなく)という監督の言葉どおり、映画としてみせるためのあらゆる小ネタを搭載しつつも「ホント戦争は地獄だぜヒャッハハハァー!」なわけである。
ラスト、死にゆくベトコンの少女をみて愕然としてしまう兵士らのシーンでそれがわかる。


圧巻なのがエンディングの行進。
燃え盛る戦場を背景に兵士たちがミッキーマウスマーチを歌いながら行軍する*7
ディズニーといえば夢の国のふりをした資本主義の権化である。
ちょっとした狂気である。
なんという皮肉な演出。これぞアメリカ。最高である*8




なんだか全く葉巻にならないな。


とりあえずキューバ旅行前に葉巻を買いたくて聴いていた曲が今日のタイトル。
フランス最強のモテエロおやじゲンズブールがフランスの国民的女優ドヌーヴとデュエットしてます。
邦題は「神様はハバナタバコが大好き」だっけな。
男性パートでは、神様はハバナタバコが好きなんだぜ、(神様が吐いた煙であろう)グレーの雲が見えるぜ、でも夜も吸うんだぜ、俺みたいに、とかほざくのですが。
それに対して、あなたジターヌ*9しか吸わないくせに、とか返す歌です。
やりとりが大人のくせに子どもっぽくてかっこいいかなと。

*1:ちなみにfacebookは面倒&リア充アピール専用SNSなので連絡用以外にしばらく使うのをやめている

*2:とそれをネタにしたのかもしれない萩尾望都の『半神』という漫画。高校生くらいのときに友人が持ってたのみんなで回し読みしていた

*3:なんとブルーレイ2本立てで、もう1枚がこれがまたもう好きすぎる同じキューブリック監督の「シャイニング」!!!いままでみたなかで好きな映画10本を選ぶならこれは必ずランクインする。なんというかもう完璧なの。怖くてかっこいい。ニコルソン最高。奥さん顔芸すごい。斧のシーンとかは怖いを通りこしてクソワロ

*4:なんてうっかりいうと私も相当なアレっぽいな

*5:ていうかグズで役立たずにほほえみデブとかいうあだ名つけるの最高すぎるだろ。英語ではゴーマー・パイルというなんかのキャラらしいんだが

*6:ハートマンになりそこねた役者、最初はハートマンの役がついてたのに演技指導に来た元軍隊出身者が余りにも巧すぎたので役を奪われてキチガイ兵士になったが稀代の名セリフを吐けたのでそれもまた良かったのではなかろうか

*7:♪えまいしー、けーいわーい、えーむおゆーえすいー(M-I-C-K-E-Y, M-O-U-S-E)。ってこれほんとにそういう歌詞なのかな

*8:そういやえげつなさでは世界一を誇るデンマーク出身ラース・フォン・トリアー監督の「ドッグヴィル」。やっぱりアメリカの寓話であることを彷彿とさせる内容で、エンディングはデヴィッドボウイの「ヤングアメリカン」だった。ミッキーには負けるがアメリカだったと連想させる選曲で印象に残っている。しかしとんでもなく美人の二コール・キッドマンがチョークで書いたセットの家で次々にレイプされるシーンはエロくはあるもののまじでキツかった

*9:フランスの代表的なブランドですね。フランスでは葉っぱとフィルタと紙買って手巻きして吸ってる人が多かったな